偽りの姫君

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無事に祠への攻略と巡礼を終えた リンクとライアは、防具屋 "紅孔雀" の前を通り過ぎ、村の最上部へと 到達する。

軽く身だしなみを 整え、長老が居る 小さな鳥かごのような小屋へ 顔を覗かせた。



「…あの、すいません…」

う〜む…おや、お客人ですかな?」



考え事をするように 頭を抱えるリト族の長老…。

まるで梟のような 出立をした その長老は、抱えていた頭を上げる。

そして 自身の目前に現れた 見慣れないハイリア人を 見据えると、嬉しそうに囀り声を上げた。



「…・・・ホホッ!その腰に付けたるは まさか…」



長老は リンクの腰元にある シーカーストーンを 再度確認するかのように 覗き込む。

隣に居るライアが 背に掲げる 錫杖をも 確認すると 咳払いをして、話を仕切り直した。



「…申し遅れました。

私はリトの村の族長 カーン。

して、その腰に付けたるは シーカーストーン

その方が掲げたるは 巡礼者の証である 錫杖 では ござらんか?」

「…その通りです」 『相違ないです』

「ホホーッ!やはり!

となると あなたも リーバル様と同じく 神獣 ヴァ・メドーに 乗り込める英傑のお一人…。

いや…英傑さまは 全員100年前に お亡くなりに…
と、いうことは シーカーストーンを受け継ぎし末裔…




族長である カーンは、しばらく口を紡ぐ。

再び 2人に視線を移すと ライアの方を見て また少し 思考を巡らせた。



英傑の末裔様は 乗り込めるとして…

果たして 巡礼者様が 神獣に乗り込むことは 出来るのか…

しかし、巡礼者様は 光の一族の末裔

いや、考えても 仕方あるまい…

う〜む…


ああ すいません、考え事を…」



カーンの呟きに リンクとライアは視線を合わせ、カーンに向き直る。

向き直った2人の眼を見たカーンは 意を決したように 続けた。



英傑の末裔様…、巡礼者様…後生でございます。

この爺の話を 聞いてくださらんか」

「分かりました」 『構いません』

「ありがとうございます。

あなたを英傑の末裔 それに光の一族の末裔であると見込んで 改めてお願いが…」



カーンは喜びに 丸い夜目を細めて笑うと 一変、暗い表情へと変わり、声色も暗くなっていく。

神妙な面持ちで 息を呑むかの如く その願いを 口にした。



「今 正に空を回遊する神獣 ヴァ・メドーを 止めていただきたいのです。

神獣を止めるには 選ばれし英傑が ヤツを内部から 制御するしかない…

村の者に こう説明したところ 気の逸った若者…テバハーツメドーの偵察に 行きました。

その時 メドーの攻撃を浴びてしまい ハーツが 負傷してしまったのです。

英傑の末裔様 お願いでございます

メドーの攻撃を免れたテバは 怒りに任せて たった一人で メドーを討たんと しております。

テバを探し出し 共に神獣 ヴァ・メドーを 止めてくださらんか」



カーンの必至の形相に 2人は快く頷く。



「もちろんです。僕たちも その為に この村を訪れたようなもの…。

僕たちに 任せて下さい」

英傑の末裔様なら きっと、そう仰ってくれると 思っていました!」

『…アタシも、知力させて頂きます。』



カーンは ライアを見ると 非常に暗い表情で 申しにくそうに 言葉を紡ぐ。



「お願いしている身で ありながら、恐悦至極に存じるのですが…」

『…何、か…?』

「その…実はですね…テバと言う若者は リーバル様に次ぐ程、村でも屈強の戦士でありまして…

少々、気難しい処が あるのです…。」

『…と、申しますと…?』

「…奴は昔気質の 頑固者でして…

女人の方が 手助けすることを 決して意としないような 性格なのです。」

「・・・」



カーンの話に リンクもライアへ視線を送る。



「…ここは、俺だけで 向かった方g…『いいえ』」



リンクの言葉を 最後まで聞かずして、ライアは 力強く応える。

その太陽色の瞳は 真っ直ぐに。

カーンへと向けられていた。



『女であろうと 男であろうと、そのような事は 関係ございません。

努めは、努め。

アタシはアタシの役割を 果たすのみ…』

「あなたの 役割…」

『アタシの この身の上は、ここに居るリンク…彼に導きを与えることこそが 運命 ― さだめ ― …。

その任を経てこそ 真の巡礼となりましょう。

その為になら 虐げられようとも、この身を捧げる所存で ございます。』



リンクは ライアの力強さに 強く、胸を打たれる。

それは カーンも 同様であった。



「…これは、要らぬお気遣いを…。

申訳ありませんでした。


 それでは、御二方。

テバメドーを よろしくお願い致します」



カーンが 深々と頭を下げる中、ライアは颯爽と背を向けて 歩み出す。

リンクは カーンに一礼すると 先を行くライアの背を 追い掛けて行った。





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