偽りの姫君

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『ちょ…リン、ク…?』



戸惑うライアに 頭をコツッと当てる。

そんなリンクの様子を 察知したライアは 抱き締められた リンクの骨張った掌に 自身の掌を重ね合わせた。



『…どうしたのよ、急に…』



顔を下に向けたままで 返答のないリンクに ライアも合わせるように 黙りとなった。



(…きっと、今。情けない顔、してんだろうな…俺らしくもない…)



リンクは 自身の心根と向き合う。


−…”俺らしさ”って何だ…。

本当は 昔から、こうやって。

誰かに 聞いてほしかっただけなのかも 知れない…−


ライアの言う通り、”本来の俺”に ならないと 真の”勇者”には 到底なれないんじゃないか…。



「…俺…」

『…ん?』

「お前が居ないと ダメみたいだ」



ライアに 顔は見えないように。

下を向いたまま、自身の腕の中に居るライアへと 述べる。



『…やっと、気付いてくれた?』

「…うん。」

『もう これからは 1人で突っ走らないって。約束できる?』

「…俺、そんなこと したこと あったか…?」

『バカ、いつもじゃない…』



ライアは微笑むと 背後に居るリンクを 振り返る。



『もう、1人で 背負わないでね』

「…ん?」

『貴方の運命。アタシにも背負わせて』



リンクも ライアの顔を見て 微笑む。



「ああ…頼むよ。」



…これで、少しは 真の”勇者”に近付けたのかもしれない。

己の弱さを認め、誰かを頼ると言うことが 100年前の俺にも、姫様にも…。

きっと、足りていなかったんだろう。



『お水、汲んで行かなきゃ』

「…ぉ、おう、そうだったな…」



リンクは 少し残念な感情に 襲われる。



(…何をこんなに 残念がってるんだ、俺は…。何、期待してたんだろ…)



…この時の気持ちを リンクが知ることになるのは、まだまだ 後のお話。





14:コモロ池 −決意と苦悩− fin.





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