偽りの姫君

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「…着いた、カカリコ村…!」



時は黄昏。
カカリコ橋を渡り、ナリシャ高地の麓伝いにある峠道を ひたすら登り、カカリコ村へと 辿り着いた一行。

谷間に佇む村の為、吹き下ろした風が吹き込む度 村入り口にある板の警鈴が カラカラ、と音を奏でている。


 カカリコ村を入って、なだらかな下り坂を下ると 警備も厳重そうな 一際大きな屋敷が 現れた。

きっと、ハイラル王の言っていた インパと名乗る者は この屋敷に居るに違いない。

リンクは エポナを屋敷近くのリンゴの木がある 横木の柵へ 引き革を結び付け、ライアへ手を伸ばし エスコートしながら エポナから降ろした。



『…着いたわね』

「インパさん…の屋敷は…」

『リンク』

「ん?」

『アタシ、巡礼の儀を行わないと…』

「そうか。後から来る?」

『ええ、そうさせてもらうわ』

「うん、分かった。先、行ってる」



ライアは リンクとエポナに片手を挙げ、軽く挨拶を交わすと カカリコ村中央部にある 女神像の泉へと 足早に駆けて行った。

リンクは ライアを見送り、警備が厳重な インパの屋敷へと向かう。



「!!」「??」

「あの…」

「なに奴!!ここはインパ様のお屋敷!…ん?その腰にある物は…シーカーストーン?」

「…ああ、そうだけど…」

「…と、いうことは…お主、いや…貴方様は…」



警備に就いている2人の年柄な男たちは 互いに顔を見合せ、納得したように 頷く。



「失礼致しました。…インパ様より お話は伺っております。さ、どうぞお通り下さい」

「…あ、ありがとう」



警備の者2人が 屋敷へ続く階段へと 通してくれる。
リンクも、促されるまま 屋敷へ通ずる階段へと 足を掛けた。

 最上段まで登りきり、背後を振り返る。
そこには、黄昏に染まる カカリコ村が、眼下に広がっていた。



「…あの…」



…微かに。確かに。何かが聞こえる…。
リンクは 空耳か、と疑いながら 自身の周囲を見渡した。



「…ぅわっ!!、ご…ごめん、気付かなくて」

「いえ、大丈夫です。御足元、お気をつけ下さいませ…って、男の人っ!?」



リンクの足元で 拭き掃除をしていた女性は、あまりの驚きに 突然立ち上がり、手にしていた雑巾を 板の間に落としてしまう。



「…これ、落ちたよ」

「ヒィィィィイイイっ!!」

「……」

すすすすみません!私、男の方が苦手で…」

「…そう、なんだ。」

「…え?その腰の物は…?」

「シーカーストーンだけど…」

「え!?もしや、貴方様が…祖母の話してくれた…リ…リン…」

「リンク」

「そ!そう!あの…忘れた訳ではなくて…その、言葉がうまく…」



女性は頬を赤らめながら、両の手で顔を覆い隠す。



「私は…パ…パ…パヤパヤ…では、なく…」

「…ゆっくりで 大丈夫だから」

「はい!えっと…パーヤ!と申します!…ぁ、言えた…」

「パーヤ、か。よろしく」

「ヒィっ!ちちち近こぉございますっ!」

「…あ、ごめん」

「…すみません、若い殿方とは まともにお話ししたこともなくて…。ささ、屋敷の中で祖母が待っております。中へ…中へ御入り下さいませ!」

「…分かった、お邪魔させて もらうね」



パーヤ、と名乗った女性は 屋敷の扉を開けてくれる。

パーヤに挨拶しながら、リンクは屋敷の中へと 入って行った。












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