女神の采配

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「ここが カカリコ村かあ…」

"結構賑わってるネ"



黄昏前。

無事に村へと到着した リンク達は、長く聳える階段を登り デスマウンテンの麓にある カカリコ村へと 到着した。

村民を驚かしてはいけない、と レオンとは村外で別れ、残るリンク達3人は 兵士が守る村の門を 抜ける。

村の最奥…、目前へと聳える デスマウンテンと風車を前に リンクとナビィは 空を見上げた。

風を受け 動力を得るその風車は、まさにカカリコ村のシンボルと言える出で立ちを している。



「おう、エマロットじゃねーか。久々だな!」



門を抜けた先にある 一本の木の根元で 腕組みをしながら 仁王立ちしている 大柄な男性…。

リンク達の姿を 見つけると、先程の強張った表情がほぐれ 柔らかな微笑みを浮かべながら 近寄ってきた。



『親方さま、久しぶり。』

「なんでぇー!久々と言うのに 相変わらず すっけんどんな態度だな!」



わはは、と豪快に 腹を抱えて笑う男は 構わず続ける。



「今日は インパ様と姫さんは 一緒じゃねぇのか?」

『ええ、少し訳ありでね』

「珍しいじゃねぇーか、任務放棄か?」

『これも任務の内よ。
妖精くん、こちらは 大工の親方さま。
師匠にカカリコ村を頼まれている お方よ。』

「こんにちは」

「おう、ぼうず!若けぇーのに 根性ありそうじゃねぇか!
オレっちのせがれとは どえれー違いだ!
うちの若えーのは ウロチョロするばっかりで ちっとも仕事は 進みやしねぇし…っと、愚痴になっちまったな!
ま、何用かまでは 聞かねえ。
ゆっくりしていきな。」

『ありがとう、親方さま。
しばらく お世話になるわ』

「インパ様の御屋敷は いつでも使えるように してあるからよ!
飯は 家内に持って行かせるから 安心しな!」



エマロットは 親方へと手を振ると、村の中腹にある 分かれ道へと進む。

まだ建設中なのであろう。

もうすぐ黄昏時が くると言うのに、大工達は 慌ただしそうに 建設を進めている。

背後からは 先程の親方が声を荒げて 指示を出しているのが 聞こえてくる。



「エマ、どこに行くの?」

『もうすぐ黄昏だからね。
今日はとりあえず 休みましょう』

「え?、じゃあ聞き込みは?」

『聞き込みは 明日。
休むことも 任務の内だから。』

「僕はまだへっちゃらだけど?」

『分かってないわね…休息もないと いざと言う時に 動けないの。
先々急ぐだけじゃ 事は運ばないのよ』

「…は…はい」

『着いたわ。師匠の御屋敷だけど 上がって。』

「お邪魔しまーす」

"お邪魔します"




屋敷の主人は ずっと留守だと言うのなに、塵一つない 屋敷の中。

天井にまで聳え立つ本棚の中には 溢れんばかりの書物が 規則正しく並んでいる。

中二階にある ベッドルームには、客人用と主用なのか、2つのベッドが 並んでいた。

屋敷の部屋の 突き当たり。

つまり、一階の奥にある 屋敷には不釣り合いなその物をみた リンクとナビィは 声を上げた。



「えっ、牛!?何で!?」

"エマ、これって 乳牛?"

『ええ。そう、乳牛。
平原の中央にある ロンロン牧場から 牛乳を毎朝運んで頂くとなると 随分な距離があるから、なるべく村民は 自給自足をしてるのよ』

「ふーん…ロンロン牧場って…どっかで…」

"マロンちゃんの 牧場かな?"

『あら、知り合い?』

「うん、ちょっとね」



とても ハイラル城に忍び込む為に 間接的にでも 協力してくれた…とは言えず、リンクは はぐらかす。

そんなリンク達に構わず エマロットは荷物をテーブルに放り投げると 本棚から 書物を引っ張り出した。



「…それ、何の本?」



リンクが エマロットの隣へ行き、顔を覗き込ませる。



『…もうすぐ、親方さまの奥さまが 食事を持って来て下さるわ。

君は 休んでて。』

「…遠回しに 邪魔って言ってる?」

『…別に?』

「休むのも 任務の内でしょ?」

『身体は 休んでいるもの。』

「ふーん…」



書物に のめり込むように 食い入るエマロットを尻目に リンクは中二階へと 上がる。

ベッドへと転がると 腕を頭の後ろで組み、大きく伸びをした。



「…?」



ふと、視界に入ってきた ベッドの淵に飾ってある 絵画に目をやる。

屋敷内にある 他の絵画とは異なり、一際目立っている その絵に リンクは身体を起こして 食い入った。


不毛の大地である 砂漠に輝く 一つのクリスタル。
その中で 祈るように眠っている女性…。
古代の衣装を纏う その女性は、涙を流しているようにも 見える。

環境が厳しく、オアシスもない その砂漠に 白い麻の花が 一面に咲き乱れ、まるで天国のように 美しい絵画…。


何か不思議な力強さを感じたリンクは その絵画から 目を離すことができなかった。





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