ふわりゆらりと逃避行

□ここのつ
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『…という訳なんだよ…』








「そ…それは…頭がこんがらがるというか…」







次に相談に来たのは唐瓜と茄子の所だった。檎のところには小判が来たため、梢は退散した。






「でも俺は、梢様の自由にしていいと思うな〜
それに梢様はやっぱり鬼灯様に甘いところあると思うし」






『やっぱりそうなのかなー…檎ちゃんにも言われたし』







「鬼灯様が言ったから、は理由にならないよ。自分で決めないと」






そうぐーっと伸びをする茄子。
彼に相談すると、どストレートな事をいってくれるので、多少気は楽になるらしい。





「俺も茄子に賛成ですけど…檎さんの言う通り、鬼灯様が言ったから、も理由に入ると思うんです」






『へー。唐瓜君はなんでそう思うの?』







「簡単です。その人を慕ってるからです」







『…ふぇ?』








「その人を慕っていれば、その人の言う通りにしたいって思うのが普通ですし」






『ふーむ…檎ちゃんもおんなじ事言ってたけど…難しい…』







「梢様ー。
それってもしかして、
梢様が人を慕ったことないからじゃないですか?」







『…あ、そっか』





手をポンと鳴らす梢。
どうやら彼女は恋愛をしたことがないらしい。だから人を慕うなどそういうものを難しいと感じるのだろう。






「じゃあそれを恋と呼べるのかどうかも難しくなってきますね…」







『そう言う二人だって、恋愛したことあるの?』







「あ、ああああありますよ!!」








「『(わかり易すぎるだろ)』」






周知の事実だが、唐瓜はお香が好きである。彼のわかりやすさも影響しているのであろう






『じゃあ…茄子君は?』








「俺いますよ〜」








『え、意外』








「俺も初耳。お前が好きになるとか…相手誰だよ?」







『うーんとねー…
























梢様』








『…はい?』






衝撃のカミングアウト
と言った方がいいだろう。
あの、めったに恋愛などしなさそうな茄子が恋愛を、しかもその場で告白したのだ。
流石の梢もびっくりだ






『あの…茄子すぁん?』








「梢様動揺がモロに出てますよ!!落ち着いて!!」







「俺別に両想いなんなくてもいいですよ」







『…えっとー…
さっきも言ったけど、私恋愛っていうもんがよくわからなくて…
今の状態で返事すると曖昧というか…』






「大丈夫ですよ!!
梢様俺の事多分好きじゃないですし 」






『えっと…え?』








「気持ちだけ伝えたくて!
あ、そろそろ仕事場戻んなくちゃ。
じゃ、今度また資料室行きますね!!」






そう言うと茄子は呆然とする唐瓜を引っ張って仕事場に戻ってしまった。













『…














わかんない





















わかんないや』








万能の神でも、わからないものはあるのだ。
それが、“生物”にとって一番大切な感情だろうと。




生物でない、“神”という種族の彼女には、わからないのだ。





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