ふわりゆらりと逃避行
□ななつ
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『という訳でお久しぶりです御母上』
「という訳とはなんだ。
何年ぶりじゃ?えーと…」
『ここ三年と二百五日は会ってません。抱きついていいですか』
「記憶力は相変わらずじゃの。ほれ、良いぞ」
『きゃー!御母上ー!』
ここはイザナミの御殿である。
イザナミは梢が捨てられたことを悔やんでおり、梢が現世をさまよっていた時に黄泉へと招待したらしい。梢もイザナミは嫌いではなく、むしろ母として尊敬していた
「お主が外に出るとは珍しいの。
鬼灯はいるのか?」
『いません。鬼灯は白澤君とお話があるようです』
「そうか、では、お前の過去についてだが…
わらわもしらん」
『マジっすか』
「むしろお主の方が万能であろうが
ただ、」
『え?ただ?』
「昔、お主が一人の少年を助けようとした時のこと、覚えとるか?」
『え、何それ初耳です』
「じゃあ原因は多分それじゃ。
恐らく、その人間に関しての記憶を奪われたのだろう」
神は人に常に平等で無ければならない。一人の少年を助けるなど、あってはならないのだ。
『そうかそうか。じゃあ、天帝(中国神のボス)らへんに頼めばなんとかなるかな?あの人万物に通じてそうだし』
ありがとー!と梢は言うと、御殿を出ていった
「…蛭子
お主なら、大丈夫だろう。信じておるぞ」
一人の御殿でイザナミは、ポツリとそう呟いた。