ふわりゆらりと逃避行
□やっつ
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「鬼灯様ー」
「おや茄子さん。居たのですか」
鬼灯が部屋から出ると、茄子が居た。本を返しに来たのだろうか。
「嘘は駄目ですよ、鬼灯様」
「…気付いてたんですか」
どうやら、さっきの話で嘘をついていたのがバレているようだ。茄子はこういう鋭いところがある。
「なんとなく、嘘ついてるってわかりました」
「相変わらず鋭いですね」
「そんなことないですよ〜
でも、鬼灯様?
正直に言った方が、梢様も喜ぶと思いますよ?」
そう言って茄子は行ってしまった。
「…正直に言ったところで…
どうなるっていうんですか」
悲しそうな鬼灯の顔は、
誰も見たことがない、
孤独な、寂しいものであった。