ふわりゆらりと逃避行

□やっつ
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『これねぇ…』






ここは資料室
梢は手に飴玉のようなものを載せていた。
その理由は数十分前に遡る























『やっほー!来たよー!』








「蛭子貴様ァァァァァァァ!!
天帝様の御前だぞ!?敬語を使わんかァァァァ!!」






「うるさいなぁ太上道君(たいじょうどうくん)略してどー君」







「誰がどー君だ!!」








『君がだよ
天帝のお付の神だからって、あんまりきばんなくてもいいと思うけど。ねー!天ちゃーん!』








「ほほっそうじゃな」




太上道君は元始天尊(げんしてんそん)、太上老君(たいじょうろうくん)と並ぶ、中国信仰対象の神でも上位に位置する神である。現在はその三人とも天帝お付きをしているようだ。

そして天帝
言わずと知れた全ての神である。ゼウスのようなものだ。決してあの某バスケットボール漫画のラスボスの名前ではない

そして、その彼らをニックネームで呼ぶ梢。よく天帝は許しているな






『天ちゃん質問です』








「おい蛭子。天帝様の御前ではせめてちゃんとした姿勢でいろ。言葉遣いもだ」







『…』





太上道君はストレスマッハで倒れたのだろう。太上老君が代わりに来た。しかし、梢になんの反応もない






「おい蛭子?」








『…蛭子じゃない。
梢だ』







「(餓鬼か!?)
…わかった。梢よ。天帝様の御前ではしっかりとした姿勢で挑め」







『はい。わかりました太上老君殿
さて、天帝殿。我から以前とった記憶、それをお受け取りに来た』







「ほう。ようやく気付いたか。
理由は、わかっておるな?」







『はい』








「なにも言わずとも良い
ほれ」





天帝が手をかざす。するとそこで何か物質が形成され、やがて飴玉のようなものになり、梢の手の上に落ちた。





『これは?』








「記憶を本当に思い出したい時、その飴玉を口に含むとよい。記憶を思い出せよう」






『ありがとうございます
…なぜ、こんなに、すんなりと渡してくれたのですか』







「お主の境遇や、時を考えるとな
もう、時効であろう。」







『…』







梢にはわかっていた。
時効などないことを。
境遇など、全く考慮に入れてないことを。
わかっていた。
飴玉を見た瞬間から。






























これは、苦しいの記憶なのだと

























記憶をとり、また与えるのも、罰なのだと。








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