ふわりゆらりと逃避行
□いつつ
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昼
獄卒達も休憩時間に入る頃
『大王?』
「あ、梢ちゃん」
『はいこれ。午後の裁判の資料』
「あ、ありがとう。
いや〜、毎回毎回、梢ちゃんには悪いなぁ」
『いえいえ、これくらい。仕事のうちなんで』
梢は資料の管理が仕事である。ということは、記録課が書き終えた資料は自動的に彼女の元へくるのである。大体は鬼灯が彼女の元へ取りに行くのだが、たまに彼女が渡しに来る時もある。
「あなたはもう少し動いた方がいいんですよ」
『あ、鬼灯いたのか。じゃあ資料室で待っててもよかったじゃん。』
そういって頬をプーっと膨らませる梢。こんなのが神様である。
お茶目というか何と言うか…あの神獣と重なるところがあると鬼灯が若干イラッとしたのは内緒だ。
『あと…唐瓜君と茄子君?』
「あ、俺らのこと覚えていらしたんですね」
『あったりまえだよー。』
あれから、唐瓜と茄子は何回か梢の元を訪れていた。なんでも、資料室の資料に興味を持ったらしい。主に茄子がなので唐瓜は梢と話していることが多いのだが。
「あ、そうでした。梢さん、これ返し忘れてました」
『えー、あ、私も忘れてた』
「何ですか?それ」
記録とはまた違う、少し薄めの本である。
『あ、これね、考察。
個人的に読んでみてどんな感じなのかってことまとめてみたの。読む?』
「あ!俺読みたいです!」
『うん。はい茄子君。
読み終わったらでいいからいつでも返しにきてね』
「わーい!ありがとうございます!」
梢はそのあと、資料室に帰っていった
「梢様って…なんか他の神様とは少し違う感じが…」
「でしょうね。もともと神では無かったわけですし…どちらかというと、おとぎ話の生物や、神獣などの部類に近いですかね」
「梢様って強いですよねー」
突如、茄子がそんなことを言う。
彼はトンチンカンな発言が多いが、たまに的を射た発言をする事がある。今のような。
「なぜそう思いますか?」
「梢様のこと聞きましたけど、俺だったらそんなの耐えられなさそうだし。梢様はそんなの気にしてなさそうだから強いなって」
「まあ、気にしてないわけではないと思いますが…確かに強いですね。精神的にも、物理的にも。
大王なんかただの石ころに見えるくらいに」
「石ころってひどい」
「じゃあ黙って手動かして下さい。
あなた午前の仕事も残したままじゃないですか」
現時点でも鬼灯と大王は月とすっぽんかというくらい差がある、と唐瓜は思うのだった。