ふわりゆらりと逃避行
□よっつ
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side 梢
蛭子
日本書紀では天照大御神、月読命、須佐之男命の次に生まれたことになっているけど、実際は一番最初に生まれた。恐らく、イザナミ様の胎盤、という事ではないか、と思う。
ああ、話がズレたね。
そんな感じで、私は一番最初に生まれた訳だ。
そう。私は蛭子。
三年かかっても、歩けもしない。
私は海に捨てられた。
『御父上?』
「使い物にならんな
海に流そう」
『御母上?』
「すまんのぉ…蛭子
わらわの…娘。」
「しょうがないさ」
『どうして、私は、船の上にいるのですか?』
だが、私が歩けなかったのは、悪しき者の呪いだった。その正体は今でもわからない。
海は、塩を含む。そんな聖なる海に出された私は、海に出された三日目に、立てるようになった。
恐らく、呪いが解けたのだと思う。
その後、船は転覆。偶然にも、海岸にたどり着いた。
「誰じゃ…?」
『…?』
「お主は、誰じゃ?」
そこに居たのが、天照大御神、あまちゃんだった。偶然にも、天照大御神のいる海岸にたどり着いたようだった。
「名前はなんというのじゃ?」
『…蛭子』
「蛭子…御父上と御母上の最初の子と聞いておる」
『子ではない。捨てられた。』
「捨てられたからなんだというのじゃ。というかお主、立てるのか?」
『海に出たら立てた。』
あまちゃんとは、話しているうちに仲良くなった。そして
「お主、随分溜まっておるのだのう」
『まあな。話せるような家族はおらんかったのでな』
「…よし、わらわが、お主の姉になってやろう」
『…は?』
「家族がおらんのだろう?
わらわが姉になってやるから好きなだけ話せ」
こうして、私とあまちゃんは、姉妹になった。あまちゃんは「優劣をつけたくない」といって双子、ということにしていたが。