その娘、怪奇につき2
□予兆
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《おい》
『…?』
《起きろ》
『…え?』
目が覚めると、真っ暗な空間。そこで寝ていた。どうした私。寝ている間に昇天でもしたのか。いや、鬼に昇天などない落ち着け私
《やっと起きたか》
『え、ちょ、まって誰』
《あぁ、お前は覚えてなかったな》
『いや、知らんよそんなもの
一人で納得して話進めんな』
《お前は相変わらずだな》
『え、お前とあったことなんてないんだけど』
こんな回りくどい言い方するやつとなんか今まで会ったことない。あ、1人いるわ。葵だ。でも葵はこんな口調じゃないし、第一私をこんな所に移動させられる奴じゃない
『というかお前、姿を見せろ』
《そう警戒するな》
そう言って出てきた…というか、急に私の目の前に現れたのは、鬼の面を付けた、男
『誰だ』
《お前がよく知っている者だ》
『は?』
《お前とは四千年以上の付き合いになる》
鬼灯?いや違う。鬼灯は私のことをこんな見下した言い方で話さない
では誰だ?四千年以上の付き合いの知り合いは沢山いるが…
『お前…
牛鬼、だな』
《流石。察しがいいな》
『昔から変わらないってことは、永らく会ってないんだろ。お前とは会ったことはないが、消去法でいくと自動的にお前になる』
《お前が記憶を取り戻してないと、こちらにも不都合が生じるな》
彼が私に向かって手をかざす。私は構えた。金棒は無いが体術の心得はある。こいつ自体が牛鬼なので糸が効く可能性は低いが、拘束くらいはできるだろう。
奴の手が光ったと思うと、頭に何かが流れ込む。
『!?
これ…』
《お前と私が出会った時の記憶だ》
『驚いたな…記憶操作も出来るのか。私の記憶を消したのもお前か?』
《ああ》
なんだこいつは。
まったくつかめない。こいつが何を考えているのか。なんだこの空気は。
《永く待ちわびた。お前が自力で記憶を取り戻すのを。私を目覚めさせるのを》
『何を…』
《─────、───────────────────。》
『!?』
《そんなことさせるわけ無い、とでも言いたいのか?》
『当たり前だろ』
《相変わらず真っ直ぐな奴だ。
だが、お前には無理だ》
『そんなこと…』
《そういう、運命なんだよ》
わかった。こいつの言っていることが。『目覚めさせる』『思い出す』わかったからこそ、わかりたくなかった。
『夢…』
今のは、夢?
いや、違うだろう。夢だけれど、夢じゃない。そう思った時には、ある書類に私は手を伸ばしていた。