その娘、怪奇につき2
□イワ姫とサクヤ姫
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『…うわぁ。女性って怖いね』
「貴方もその女性ですよね」
「瑠璃はサバサバしてるからこうゆうのはわからないわよねぇ。まあみんなそうなら平和なんだけど」
お香さんと鬼灯と昼食中です。
で、今テレビで職場のイジメみたいな特集してる。おーこわいこわい。出来るなら別の話題にしたい。
「……見た目がイジメの種になるというのは残念な事によくありますが、女性は特にその傾向が強い……。そんな印象がありますね」
『女性は男性の数倍美意識が高いからねぇ。そして「我こそはっ!」って感じの気持ちも』
「瑠璃最近それで痛い目見たばかりでしょう……そうねぇ…。でもそれは簡単に分析できない問題だわ、鬼灯様。女の諍いに、殿方はなるべくお関わりにならない事よ。こじれるから」
「…そういうものですか」
女性というものは難しい。
常に周りの目を見て生きて、自分をよく見せたがるものだ。まあ、私も女性なのだが六千年も生きてりゃ乙女心もクソもなくなるものだ。しかも人間で言う”青春時代”を私は阿鼻地獄の主任として過ごしていたので女性らしい感性が少しも育たなかった。
「鬼灯様でも、わからない事ってあるわ。女の事はね」
「…ホントに難しい問題です…」
『木霊さんじゃないですか。今日もかわいいですねギューってしていいですか』
「お前は少し欲望を抑えるということをしろ」
木霊さんはこう見えても私や鬼灯より年上だ。下手したらあの淫獣より年上かもしれない。…たとえ、こうやってお子様ランチを持っていても。うん。
それにしても、木霊さんがここに来るとは珍しい。なにかあったのだろうか
「イヤ〜…今は山も住みにくくて…。まず私、花粉症なんです……」
「それ、マムシが自分の毒に当たるようなものですよね?」
なぜそんなミラクル展開が起こっているんだ。鼻が赤いのはそれか。そのせいか。
「だから…先日あまりの花粉量に千里眼を使ったんですよ。そして倍率ドンな感じで顕微鏡のごとく花粉をズームして見ると…アメリカのそのテのCMみたいな様子が見え…神としてそんなもんを見てしまったやるせなさでいっぱいに…」
「花粉の本分は受粉ですから、見てしまった貴方が悪いですよ」
『木霊さんどんだけ心綺麗なんですか』
「まあ最近不法投棄とか増えてるし…何かと理由をつけて地獄に逃げてきたくなっちゃうわよねぇ…それは。」
「そうなんですよ…はぁ…」
…さっきから木霊さん全然ご飯が進んでないな。ゴミとか以外にも、木霊さんに悩みがありそう。
『木霊さん、他にも何か悩み事があるんですか?』
「…正直に申しますと、皆さんの仰る通りで…。山には神が多くおります。私のような木の精…それに山の大将、大山祇神。その娘である姉の石長姫と、妹の木花咲耶姫。他にも、金山彦・金山姫…」
『長い。多い。山神ファミリーでお願いします』
「俄然わかりやすくなった」
「その山神ファミリーの中でも山神ツートップが、石長姫と木花咲耶姫。短くイワ姫とサクヤ姫としましょう。この二人、姉妹なのですが…」
木霊さんがどこからともなく取り出したのは、その姉妹の写真。
『えぇーっと…これは…』
「もうこれだけでどんなことが起こるのか想像出来ますね」
「あらぁ…」
「まぁ経緯は省きますが、この二人がその昔、ニニギという神の元に二人揃って嫁がれました」
「ニニギ?」
「天照大神のお孫さんに当たる方ですね」
「しかし姉のイワ姫だけが『醜い』という理由だけで、返されてしまったのです」
「酷い話ねぇ…」
「それ以来、イワ姫は美人がお嫌いで…。美人が山へ入ると、私の分身である木々を…メキメキ倒すのです……!」
女性禁制の山とかアレか。そのイワ姫って人のせいで入れないのか。なんかその人のせいで日本が色々と影響受けてるけど大丈夫か日本。
「今夜は、富士山で山神のパーティーがあるのですが…あの姉妹の空気を考えると…」
『絶対胃潰瘍にはならないようにしてくださいね。』
「ちょっと行ってみたいですね」
「えぇっ!? 本当ですか!?」
物好きだなお前。でも私も行ってみたいな。
『木霊さん、私も行きた』
「ダメです!瑠璃様は絶対ダメです!」
『なんで!私だけ仲間外れとかひどいよ!いいでしょお願い!』
「あなた自分の顔鏡で見たことあるんですか!」
『毎日嫌になるほど見とるわ!何さ!不細工禁制なのかそのパーティー!クソイワ姫め顔面二度と見れないようにしてやる!』
結局私もついて行くことになりました。楽しみだなー。