その娘、怪奇につき2

□薬剤師助手はいかにして生まれたか
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ラルside






「生んじゃってごめんね」









それが幼少期一番心に残っている言葉かもしれない。
























三歳になるまで母親に「お前は他の子とは違う」と、耳がタコになるまでいわれた。母親の書記とかから、なんとなく自分は巫女と神獣の子なんだってわかった。
どうやら、人の形に変化した白兎神に恋してしまったらしかった。


















「ラルクバーンちゃん!こっちこっちー!」










「わかったわかった。今行くよー」











三歳のあの日まで、みんなと普通に遊んでいた。神獣の子とはいえ特別な何かもなかったし、村の子とも普通に接していたんだ。
そう、あの日までは。











「盗賊だーー!!」











村に、盗賊が攻めてきた。
自分たちは逃げ出したけど、一人逃げ遅れた子がいた。









「あぶない!」








「ラ、ラルクバーンちゃん!!」










今にも剣で刺されそうな友達と盗賊の間に飛び込んだ。体が勝手に動くってやつだった。





だが、いつまでたってもくるはずの衝撃は来ない。瞑っていた目を開けると










「…え?」









「ラルクバーンちゃんすごい!!」











そこには氷ずけの盗賊。
自分がやったのか。
人を殺したのか。
子供は皆、すごいすごいと騒いでいた。
そして









「ラルクバーンちゃん、目、変だよ?」










この力を使うときは、目が赤くなるらしかった。


















その後、自分は村の離れにある祠に閉じ込められた。目も呪いだからだと目隠しをされた。
おかしいよね。子供を守ったのに化け物扱いされるんだから。でも母親からならって”気”、だっけ…まあいいや。そんなものがわかるようになっていたから外がどんなんだか分かったし、ご飯は運んでくれたから別に死ぬってほどじゃなかった。

























十年後、自分は殺されることになったらしい。
村の人たちが集まって、騒いでいた。
生に執着なんてなかった。
十年ぶりに開かれる祠。
そして
















「ラルクバーンお願い!逃げてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」










十年ぶりに聞く、母親の声。
気が付いたら、逃げていた。
生に執着なんてなかったのに。
今でもわからない。











「まてやっ!」










「っ!?」









ただ、何人かが追ってきていた。しばらく逃げたところで、捕まってしまった。










「死ね」









「っっ!!離せ!」











とっさだった。
手を振りまわす。
すると、手に冷たい感覚が走った。
目隠しをしているから分からないけど、
あの時と同じ。
人を凍らせたんだ。

















「…え」













ただ、気で分かったんだ














「嘘だ…」


















殺したのは




















「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
















十年前、一緒に遊んでいた子供たちだったんだ。







 



ラルside end


 
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