怪奇な娘と一人のみなしご

□そのはち
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「あいつのところへはもう行くな」





「神への生贄だ。いずれ死ぬ」





『決めてるのはお前らの勝手だ。神は生贄など要らないとおっしゃっておる。




丁は、死なせない』

















『丁!おはよ!』





「瑠璃…なんですかそれは」





丁の所へ訪ねると、丁が驚いた顔でこちらを見てきた。





『これ?別になんともないよ。転んだだけ』





「絶対違いますよね」





怖い目で丁は睨んできた。
この子は下手したら大人より察しがいいんだったね忘れてたよくそったれ!





『あはは…なんともないから…ね?』




「ふぅ…どうせ私のことで何かあったのでしょう」





察しよすぎるだろこの子。なんだよこいつ。






『大丈夫だよ!すぐなくなるってこんなの!』


















「なんで、私なんかの為に、生贄の為にそこまでするんですか」






その瞬間、丁のほっぺをつねった。





「いひゃいです」




『馬鹿じゃないの…』





あぁ、やっぱり泣き虫だな自分。涙が止まらないや。それ以前に、私は無力だな。



『丁は!私の大切な人なんだ。私は、今までずっと引きこもってた』





あのお寺で。外に出ると子供達からは好かれる。でも、大人達からは言われるんだ。



『化け物って、言われたんだ』





「…」






『でも、丁は私を外へ出してくれた。丁が居たから、丁に会いたいから外に出ることに抵抗はなくなったし、人と関われるようになった。何より、丁は、私の、"家族"みたいだって。初めて、思えたんだ。家族が出来たって。』






そこまで言って、もう何も言えなくなった。涙と吃逆は止まらないし、こんなこと勝手に思って迷惑かなと思った。けど




「…あなたは、ばかですね」





丁は、抱きしめてくれた。
こんな自分勝手な私を。





「私の為に傷つかないで下さい。とりあえず、今は泣いて大丈夫ですよ」





『うん。ありがと。』





「瑠璃

















私も、あなたのことを家族と思っています」







それほど嬉しい言葉はなかった。





ねぇ丁?知ってる?



"丁"っていう字はね、
漢字の意味は"召使"だけどね、"テイ"って読むと、占い的な意味では"近くにいる人を温める性質"を意味するんだよ





丁に、ほんとにぴったりの意味だね






 
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