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□やっと素直になれたから。
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ありったけの力でストライカーを飛ばした。




一分、一秒でも速く、
千羽の姿がみたい。




たった数日傍にいなかったのがこんなにも重みになっていた。

今は、この海を進むにつれて、どんどん軽くなっていく。




「早く、会いてぇ…。」






















島の隅にストライカーを乗り捨て、全力で村を目指す。




見えてきた小さな家の大きな木、

そこには、

俺の求める姿があった。




「千羽!!!!!」




想いをぶつけるように名前を呼ぶと、

思いっきり振り向いた。

その顔は、涙で濡れている。




『…どう、して…』
「ハァ…ハァ…っおま、なんで、泣いてんだよ…」
『っ…だって、』
「なんかあったのか!?まさか、何かされt」




息の切れて、動揺する俺にぶつかるように衝撃が走った。

それは、千羽が抱き付いてきたのだとわかるまでに少し時間がかかった。




『エース…。』
「…千羽、俺は、やっぱお前と一緒にいたい。」
『っ』
「だから、連れ戻しに来た…。」
『…う、』
「勝手だってことはわかってる。けど、」




千羽の肩を引き、涙で溢れるその目を見て、俺の本当の気持ちを伝えた。

思っていること、いたこと、全て。

千羽は泣きながら、時折、相槌を打ってた。




「千羽、この海は、危険なことも山ほどある。この先、きっと何度でも…」
『ん…』
「けど、俺は絶対お前を守る!だから、俺と来てくれ!」




涙を拭うために擦られた手を取った。

片手で頬を撫ぜ、代わりにその涙を拭う。

溢れて止まない雫には、悲しさじゃなく、嬉しさのがこもっているような気がした。




「千羽と、もっと一緒にいたい…。」
『わ…たし…』
「ほんとは、そういいたかったんだ」
『…た、しも…』
「ん?」
『私…っも、』
「千羽…」




頬に添える手に、千羽のそれが重なった。

あったかい温もりを感じ、俺も、その手を握り返す。




「ずっと…傍にいてくれ…」
『エースっ…』




そして、

俺は、千羽の唇にキスをした…。






















俺が君の手を、握り返したのは…




君の優しさに、言葉にならなかったからで、




迷っているような、不安を消したかったからで、




楽しそうな笑顔を、誰にも渡したくなかったからで、




傍にある温もりが、愛しいと気づいたからで、






















その全てを手放して、ようやく気付いた…。




そして、









[やっと素直になれたから。]




*2015.9.23




確かに恋だった様から頂いたお題D




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