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□俺と違う愛を
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「…」

『…あ、あの…』

「あ?」

『っ…あんまり、映画…好きじゃなかった、の…かな、って…。』

「別に。嫌いじゃねぇよ。」

『そ、そか…よかった、です…。』

「あー。」

『…。』

「…。」


度々起こる沈黙…。俺といる時は、あんまねぇのにな…。


『…。あ!あそこのランチ!美味しくて…。この前、ウキョウさんと行ったんです、けど…』

「知ってる。嫌になるほど書いてあったからなぁ。」

『あ…日記に…?』

「あー。」

『…え、と…もし、ウキョウさんが、嫌じゃなければ…行きませんか?』

「は?俺の味覚に合ったもんなんて食えるかよ。お前も相当、味覚…、変わってるんじゃ、ねぇの?」

『っ…そ、そう、かも…。』


言うことがキツイのは自覚してる。

これでも優しくする努力もしてるつもりだ。

けど…

こうやって、千羽はうつむかせることが殆どだ…。







『あ…。これ、買って帰ろうかな…。』

「んなもん買ってどーすんだよ。邪魔になるだけだろ。」

『あ、はい…。』


千羽のためにと思っていうことも、何でか空回りしているらしい。

こういう反応されるたびに、オレもイライラしてきちまう。

一日いることなんてなかったから、余計だ…。














結局、夕方になり、オレも千羽も限界と思ったからか、

帰る流れになった。

最初より、はるかに減った口数…表情も、下向いてるから見えねぇけど、

たぶん、暗い…。














帰り道、オレは千羽の少し前を歩く。

俺は、隣を歩くけど…オレは、歩く勇気なんてねぇ…。




『あ、の…』


沈黙が嫌なのか、いつも千羽は、話を振ってくる。

オレと話すのは、ツライんじゃねぇのか…?

オレは毎度、そんなことを考えるわけだ…。


『私、その…いつも貴方を怒らせて、ばかり、で…』

「別に怒ってねーよ!」

『は!はい…』

「あ…ッチ」


そして、また…

怖がってるような、下を向いた顔。

こうなったら、もうオレにはどうしようもねぇ。

だから…


「…はぁ。もういいか…。」

『え?』

「待ってろ、今、俺に…変わる…。」


そう。だから限界がきたら、俺と交代する…。




『嫌‼‼‼』

「っ!?……は?」









背中に感じた初めてのあたたかさに

突然頭が真っ白になった…。




千羽から…抱き付いて、きた…?












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