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□指先から始まる恋
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『貸し出し期間は1週間です。』
「ん、どうも」




テスト期間が迫ると、図書室も人が多くなってだりぃ。
斯く言う俺もその一人で、参考資料を借りに来ていた。

ここのところ毎日通っているのだが、そういえば図書委員の係りの奴がいつも同じ人だということに気付いた。

めちゃめちゃ親切で、気が利く。
探してるものがすぐわかるらしく、委員として仕事をこなしてるのがわかる。

けど…




「これ、めっちゃ解りやすかったわ。ありがとな」
『そうですか。よかったです!』
「そーいや、あんたテスト勉強とか大丈夫なのか?」
『え…?』




毎日当番してるとか、
テスト期間に大丈夫かと心配になった。

いや、別にクラスメイトでもねぇし、知り合いってわけでもないから…大きなお世話だとは思うんだが…気になっただけで…。




『心配してくれてありがとう。でも、仕事しながら勉強してるから、大丈夫です!』
「あ、そっか。んなら良かった。」




何が良かったんだとも思ったが、
彼女がなにも言わなかったし、自分でもスルーしておく。




「あー…」
『…?』
「えっと…」
『何かお探しですか???』
「そ、そう…えっと、次現国でさ…」
『それでしたら、いい資料がありますよ!』




話に詰まってしまい、変な流れになって咄嗟に頼んでしまった。

資料があっても困らなくはないが、彼女の時間を使ってしまったことに少し後悔もするわけであって…それでも、後戻りもできない…。




『えっと…あ、ここにあった!仕舞い間違いかな?』
「っ…」




本棚から取り出す仕草が妙に綺麗に見えて、一瞬ドキッとした。

手が、綺麗、なのか?

それからの彼女の行動はどれも俺を引き寄せて、目が離せないでいると、不思議そうな視線とぶつかる。




『あの…日向君?』
「っえ?!なんで、名前…」
『ぇ?あー、貸し出し名簿です。毎日来てくださって、覚えてましたから!』
「あ…そりゃ…そうか…」
『…?』




なんか意識しちまったのが恥ずかしい…。




『はい!こちら、どうぞ!』
「お、おぅ…さんきゅー…」




手渡された本を受けとるが、あと数センチで届かない指先。

触れたらまた動揺するのはわかっていても、
触れてみたいと思ってしまう。










【指先から始まる恋】




(あのさ、あんた…名前…)
(あ、柘榴千羽です!)
(…千羽、か…)
(えっ…と…。名前呼びされると、ドキッとしますね…笑)
(あっっっ!?)




*fin*

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