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□嘘つき
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ガバッ!!!
「うおっ!?ビビった!」
『…あ…』
「っどうした千羽!?なんで泣いてんだ!!」
『…エース、エース!エースが!!』
「お、おおお俺が何かしたか!?」
『違う…あれ…生きてる…』
夢を見た。
荒れ狂う戦争の最中、
最愛の人がその命を奪われる
夢……。
それは余りにリアルで、今もまだ、この肌に媚びり着いている気さえする。
「泣くなよ!悪かった?俺が何かしたなら謝るから!!」
『ちが、違う、くてっ…エースが、エースがねっ!いないの!!』
「え、いや、俺ならここにいるぞ?」
『っ、うん!っぅ…ん、エース!!』
「大丈夫だ、千羽!そんなの夢だから、な?」
飛び起きれば、部屋の扉は開かれた瞬間で、私を起こしに来た本人は慌てふためいていた。
その瞬間は、頭が真っ白で、ただただ、溢れ出す気持ちをぶつけることしか出来ないでいて、今は、そんな私の背を、彼がゆっくりと撫でている。
もし、彼が、エースがいなくなってしまったら、どうすればいい?
「俺はいなくならねぇよ!」
『……』
「千羽、こっち向け!俺のこと見ろよ!ほら、ちゃんといるだろ?」
『……』
「なんだよ!俺が幽霊だとか言うんじゃねぇよな?」
『……言わない、よ…』
「破棄がねぇな〜」
きっと、
耐えられないだろう。
そんなことを思った。
『じゃあ、エースは?』
「は?」
『私がいなくなったら…』
「馬鹿なこと言うなよ」
いつもと違う、真剣な表情をされた。
それは本当に怒った時の顔で、
なかなかに見れるものじゃない。
新鮮だなぁと思う反面、
エースなら、私がいなくても平気なんだと悟ってしまう。
『ごめん…』
「2度とそんな事言うなよ?お前と離れるなんて、有り得ねぇからな!」
『……』
その後に向けられた笑顔と、
擽ったいようなキス。
温かくて、心まで満たされた。
【嘘つき】
『…夢…?』
薄暗い天井が見えて、私は目を覚ます。
そこには彩のない日々が残っていた。
重い体を起こし、
もう見ることのない温もりの影を想う。
*Fin*
唐突に思いついた夢。
2016.1.12