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□見えない夢に…
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side:ace
真っ暗だ。
何も見えない、ここはどこだ?
―まだよ…
「(誰だ?)」
―まだ…
「(まだ?)」
―生まれてきてはダメ…
「(そうか…。じゃあ…もう少し…)」
目を開けると、光で前が見えなかった。
薄らと映るのは、
俺を見る、優しい瞳(め)…。
さっきの声は…
もしかして、
「母さん…?」
『え?』
「…」
『エース?』
「あ、ちぃ…?」
『うん、おはよ。エース。』
「ん、おはよ…」
目を覚ますと、俺は千羽に膝枕をされていた。慌てて飛び起きると、クスクスと笑って嬉しそうな彼女の笑顔か見える。
その温もりに、凄く安心した。
さっき見た夢に出てきたのは誰だったんだ?
ちぃじゃ…ないよな?
薄らと覚えているのは、フワフワとした髪と、涙を溜めて俺を見る瞳だった…。
「なぁダダン…」
「ん?なんだい」
「ちぃは、俺の母さんのこと、知らないんだよな?」
「いきなりなんだい?オメェの母親は、オメェを産んですぐ死んだって聞いてるよ。知るはずねぇだろ。」
「だよな…。」
「千羽と何かあったのかぃ?」
「別に何も。」
「そうか。っ!?ルフィ大人しくしてやがれ!!」
アジトに戻り夕飯の後、食休みをしながら頭を過る昼前の夢。
確信はないが、やはり、あれは俺の母親だった気がする。
考えても仕方ねぇ事で、今の俺にはちぃがいる。
だから別に、会いたいとかじゃねぇ。
ただ、
胸に穴が空いたような、そんな気分なだけだ…。
食後の修行だと言いながら、アジトの壁をぶっ壊すルフィを縛り付けたダダン。また囲炉裏の傍に座り声をかけてきた。
「そんなに気になるならガープにでも聞きゃいいだろぅ?アイツなら、写真の1枚でも持ってんじゃねぇのか。」
「ジジィに…」
「千羽に言えば連絡つくだろうからねぇ」
「ちぃには言えねぇ!!」
ちぃの名前が出て、思わず声を荒らげちまった。
自分でも驚くくらいで、何故か、悪いことをしたような気持ちだ。
きっとちぃに知られたら、傷つけてしまう気がする…。
「ハァ。じゃあウジウジしてんじゃねぇ!ほら!さっさと風呂入ってきな!ルフィテメーもだ!!」
「…るせぇよ…クソババア」
その日は、寝付けなかった。
また夢を見るんじゃないかと思ってだ。
知らない母親を夢見るよりも…
「ちぃに…会いてぇ。」
「〜いけょ…エースー」
「!?ルフィ?」
寝言でルフィが俺の背を押した。
俺はルフィの掛け布団を直すと、すぐに山を掛け降りた。
*