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□言葉にならなかったからで、
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初めて悪魔の実を手にした。
コントロールが俺には難しく、感情とともに発揮してしまうその脳力に、面白いと思う半面、少し不安もあった。

仲間達は口を揃えて心強いと言った。それを聞いた俺も、船長として仲間を守れる力を得たんだと、過信してたかもしれない。




「エース隊長!海軍の船だ!!」
「やべぇ!撃ってきやがる!!」
エ「俺が行く!!!」




向かってくる奴らは片っ端から迎え撃った。火拳の一発目は簡単に船数隻を沈めていく。
それが快感でもあった。




「流石エース!」
「隊長に続け!!」




海軍の船が殆ど沈んだの確認すると、残りは撤退を余儀なくされたようだった。

船の残骸を確認しに行く仲間達。
無事な食料と少しの財宝を持ってきた。
何故そんな物が積まれていたのかと聞くと、どうやらとある海賊を捕獲し、避難民を保護していた船だった。

勿論、その海賊も、一般人も、俺の炎に巻き込まれたのだ。

少しだけ、心がざわついた。
その時だった…。




『た…すけ…てっ』
エ「!?お、お前、生きてんのか?」




ボロボロになった舟を徘徊していると、扉の下敷きになった女を見つけた。瞬時に、それを除けていた。
女は虚ろな目になりながら、小さく助けを求めている。




『い、たい…の…おねが、い…』
エ「っ…ま、待ってろ!」




また心がざわつくとともに、
俺は女を抱えてすぐに船医のもとに走った。






















治療が終わると、女を部屋で寝かせることになった。
何故助けたのか、皆が疑問に思っていたようだが、それには成り行きだとしか答えられない。
船長命令は絶対!!仲間達はそれに従ってくれるから幸いだ。



夜、海軍を追っ払ったことで宴を開いている。俺は少しだけ、気乗りがしなかった。




「エース隊長どーしたんだよ?」
「あんたのお手柄だぜ?」
エ「んー?あー」
「船長は一般市民を傷付けたことを悔やんでんだろうよ、察してやれ。」
「船長がそんなたまか?」
エ「お前失礼だぞ!?」




そんな声に一括を入れ、俺はそのまま、女のいる部屋に来た。
まだ目は覚ましていないようだ。
近くの椅子に座り、そいつを見ると、悪夢を見ているように辛そうだった。

程なくして、そいつはパッと目を開けた。体中が痛いのか、クッと強く目を瞑っている。
そんな女に、声をかけた。




エ「気が付いたか?」
『…貴方は?』
エ「俺の名は、ポートガス・D・エースだ。お前、名前なんてんだ?」
『私…千羽、です…』
エ「千羽か。体は大丈夫か?」
『私…確か、船に…』
エ「…」
『そ…突然、船が爆発して…』
エ「それは」
『あ…貴方が、助けてくれたんですね?』
エ「あ…あぁ…けど…」
『ありがとう。』
エ「っ」
『助けてくれて、ありがとう。』

目を覚ました女、千羽は、そう呟くと…そっと片手を俺にあげてきた。






















俺が君の手を握り返したのは…






ーその笑顔に、






[言葉にならなかったからで。]




*2015.09.15




確かに恋だった様から頂いたお題。

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