P

□すき、好き、大好き
1ページ/1ページ






「千羽!」
『エース!お仕事終わったの?』
「おう!」



部屋に入るや否や、椅子に座った私を後ろから抱きしめてきた。
私の大好きな人。
白ひげ海賊団2番隊隊長、ポートガス・D・エース。

ギュッと首元に顔を埋められると、ちょっとくすぐったい。
それを知っていて、意地悪く悪戯もする彼。



『んっ』
「千羽のその声、好き…んっ」
『くすぐったいよ、エース…ンん』
「嫌?」
『意地悪…』



嫌ではない。むしろ、私にしか見せないこういう顔が好きだ。
それに、本当に嫌なこと、したりしないから。



「ん…チュッ…」
『ヒャッ…エース、おわりぃ!』
「了解。え、怒ったのか?」
『むー』



ほら、嫌だって言えばちゃんとやめてくれる。
私は昼間から盛るほど欲求不満ではないのだよ?



「その顔も嫌いじゃねぇ!」
『怒られて笑うな!!』
「すいませんでした〜」
『まったく。あ、そうだ、私マルコ隊長にお使い頼まれてるの。ちょっと行ってくるね!』
「マルコに? なんで千羽が…」
『近くにいたからかな?』



それを聞くと途端に不機嫌顔になったエース隊長様。そう、私が他の人といるのは極端に嫌う。きっと好きが故に。
扉に向かおうとすると、腕が捕まれ、壁にどんされた。



『エース?急がないと怒られるんだけど。』
「行かなくていい。マルコんとこなんか…」
『マルコ隊長に怒られるのは避けたいなぁ…』
「お前は1番隊じゃねぇだろ!」
『そうだけどね…』



こんな風に拗ねるのも日常茶飯事だったりする。特にマルコ隊長やサッチ隊長の時は尚のこと酷い。
これは30分は話してもらえないだろうか?
マルコ隊長の鉄拳だけは避けたいが…。



『エース?』
「ダメだ」
『すぐ戻ってくるから』
「嘘つけ」
『ねぇ…ンッ…』
「ン…チュッ…。行くなよ?」



こんな顔で見つめられて、キスするなんてズルイ。私の逃げ道を無くすのは、本当に得意なんだ。



『んー…じゃあ一緒に行こう?』



いつもはこんな提案も拒否られる。けど今日は気分が好調なのか?すんなりと受け入れてくれた。
これで鉄拳は喰らわずに済みそう。
私たちは手を繋いで、測量室に向かった後、マルコ隊長の部屋を訪れる。



「おう、ご苦労さん…って、なんでエースもいるんだよぃ」
「いちゃ悪いか?」
「別に。」
『マルコ隊長、こちらで間違いありませんか?』
「合ってるよい。…ハァ。なんでお前は2番隊所属なのかねぃ。」
『…?』
「こんな仕事のできるヤツが欲しいよぃ。」
「なんだ!?やらねぇぞ千羽は!!」
「いっそ勧誘してぇな」
「だからやらねぇ!千羽は俺のだ!!」
『え、エース!!!』



時々人前で構わず爆弾を落とすのはやめてほしい。例え事実でも、羞恥心は抑えられないから。
あ、マルコ隊長あきれてらっしゃる…。



「ありがとよぃ!千羽。また頼む。」
「二度と頼むな!!」
『失礼しました!』



プンプンとまた不機嫌さを増したエース。ご機嫌取りには、あれが一番。



『エース!ご飯食べよう?』
「飯か!そーいや昼飯食ってねぇな。」
『いこいこー』



ほら、もうルンルンで手を振り始めた。いつものように、昼飯何かな?などと楽しそうに話してくる。単純でコロコロ変わる表情が愛おしい。






















「敵襲だァァ!!」



私達は海賊。勿論こうやって攻撃を受けることもあるし、戦線医療部隊の私は、戦地で治療に回らなければならない。怪我だって、受けることもある。



「おい!千羽!?聞こえるか!?」
「エースあそこだ!!奴等が撃ってきやがった」
「ぶっ殺してやる!!!」



船の背後を取られ、怪我人が出てしまった。直ぐに治療に向かうと、ともなく放たれた砲弾は私の近くに当たってしまう。
こういう、不運も存在する。この船は強いけど、それが海賊の世だった。




目が覚めると、少しだけ身体に痛みがあった。けれど、軽症。船も敵戦を全滅させたようだ。エースの暴走によって。



「よかった…目覚まさなかったら…どうしようかと…」
『このくらいじゃ死なないから』
「わかんねぇだろ!?こんな、細い身体で…。」
『エース、そんな顔しないで?大丈夫だから。』



今にも泣きそうなエースを見るのはツライ。こんな顔させている自分に腹が立つ。だから目一杯、笑って安心させてあげたいと思う。

体を起こし、泣きつくエースの頭を撫でる。イイコイイコしていると、段々と落ち着いてきた呼吸。



「千羽〜〜〜」
『よしよーし』



ずびーっと音を立てながら鼻をかんであげれば、ようやく笑顔が戻ってきた。釣られて私も笑顔になる。




その日は、一緒に朝を迎えた。目を開けると、広い背に、親父様のマークが刻まれている。
この背がとても愛しくて、暖かくて、私は大好きだ。



『チュッ…。エース、傍に居てくれて、ありがとう。』
「ンッ…ん〜…」



大きな背にキスを落とすと、くすぐったそうに寝返りを打った。
私を抱き枕のようにギュッと抱えて、尚も寝息を立てている。

この無防備な寝顔も、愛おしい。



『チュッ…大好き、エース。』
「んぁ…。俺も、千羽、好だ…ぞ…。」
『フフッ…寝言かよ〜』




可愛い君も、我儘な君も、泣き虫な君も、

全部全部大好き。

私を思ってくれるのが、堪らなくいとおしいよ。

ねぇ、エース?

起きたらまた言うね。今度はちゃんと届くように、




【すき、好き、大好き】




(おはよ、エース!)
(ん、はよ、千羽)
(昨日はありがとうね!大好き!)
(ん、知ってる。)




*fin*




2015.8.26
制作:柘榴千里

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ