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□貴方の声、君の声。
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別段、特別に思ったことはなかった。

美人さんだと思ってはいたが、それ以上でも以下でもなく、

ただ隊長として、尊敬すべき人だった。




『!?!?』




あの衝撃を受けるまでは…。























『イゾウ隊長?お疲れですか?何か飲み物持ってきましょうか?』

「あぁ、そうしてくれるか?」

『はい!』




それはある、船番の時のこと。

連日海軍から逃げ回っていた疲れが出たのか、隊長が疲れた顔をして座っていたので、
私は少しでもいつもの優雅な隊長に戻ってほしくて提案していた。




その時だ。




「…ックフ」

『!?』

「ありがとよ。」




鼻にかけたような、なんとも独特な小さな笑い。

聞く人によっては、少し馬鹿にしてるような、鼻で笑われたような感じ。

そんな小さい笑いが、




私には衝撃で、すごく、色っぽく聞えてしまったのだ。




『い、いってきます!!!!!』

「おい!そんな慌てるなよ!!…なんだ?」




体の奥から熱くなるような感覚。

ドキッとして、痺れるようなあの声が、頭から離れない。

それを振り払うように、私は全力で走って行った。









その日から、イゾウ隊長のその笑い方が妙に耳に着くようになってしまい、意識するようになってしまった。




どうやらその癖のある笑い方は、イゾウ隊長の癖のようだ。

あの色っぽさでそんな風に笑われたら、頭がどうにかなってしまう。

吊り橋効果、とはまさにこのことなのだろう。




だから、

避けるようになってしまったのかもしれない。




















避けていることは、イゾウ隊長にはすぐにばれてしまった。

そして案の定、お呼び出し。




「不満があるなら言え。俺の隊は下っ端も区別したりしねぇぞ。」

『いえ…不満とかではないです…。』

「じゃあ一体全体なんで避けてんだ!」




よく考えてみれば、自分の緊張のせいで、隊長には失礼なことをしている。

でも、

それでもやっぱり、気づいてしまったから…。




「俺が何かしたか?」

『…いえ』

「嫌がらせでも受けてるのか?」

『そんなこと絶対ないです!』

「まあ、だろうな。…ハァッ…言えない事なのか?」

『っ…』

「…ックフ。チハネ?別に怒らねぇ。言ってみろよ。」




ドキドキする心臓と、もっと聴いていたいと思ってしまう自分に…




イゾウ隊長を、好きになってしまった自分に、気づいてしまったら、

もう、避ける以外に方法が見つからない。




だって、どうやったって届かない思いでしょう?




こんな下っ端の私と、この海最強の、白ひげ海賊団隊長なんて…。




『…っ』

「…ん?」




優しく、寂しげに見つめられ、少しだけ、口を開きかけた。




受け入れられなくても、こんな寂しそうな顔させるくらいなら、言ってしまおうか?




『イゾウ、隊長…』

「なんだ?チハネ。」



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