深海ユートピア

□〜見えない距離〜
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〈見えない距離〉























エースが本格的に白ひげ海賊団の所属になった。

隊が不足している2番隊に入ることとなる。

その祝いの宴は3日ほど続いていた…。




サ「いや〜エースの反抗期は長かったな〜」

エ「うるせぇサッチ」

「トゲがなくなった途端こんなだもんな!」

「一時はどうなるかと思ったぜ」

「ほんとだよなー!」




誰とも打ち解けていなかったのが嘘のように、もう家族の一員になっている様子。

それを皆が喜んでいるようだった。

もちろん、スペード海賊団のクルー達も、それは同様だった。




















サ「千羽ちゃんも明日には完全復活みたいだし!これで次の島に心置きなく上陸できるぜ?」

ハ「千羽元気になったんだ」

サ「もう熱もねぇみたいだ。マルコが寝る間を惜しんで看病してたんだぜ(笑)」

ラ「あのマルコが!?!?」

ハ「ラクヨウは知らなかったの?マルコは千羽にベタ惚れだよ…気に食わないけど。」

ジョ「あれで惚れてるのか!?」

ビ「好きな奴ほど苛めたくなる、というだろう。」

サ「ガキかよってな〜」

マ「誰がガキだよぃ…」

「「げっ!!!!!」」




宴の席。皆いい感じに出来上がり、マルコのことをからかっていると、ご本人登場。

サッチとハルタが犠牲になっていた。




エ「マルコはアイツが好きなのかぁ」

マ「別に嫌ってねぇよぃ。ただ、お前らが考えてるような好意とはちげぇ。ガキはどっちだよぃ…。」

エ「ふーん。じゃああれkぐががぁ〜〜〜(寝)」

マ「寝んな!!!!!」

ビ「なぜ食べながら寝れるのか皆目見当もつかん。」

ハ「というか喋ろうとしてるのに寝るとか意味がわかんないよね?」

『うん。おかしいです。』

「「千羽(ちゃん)いつの間に!?!?」」

『皆さんいいリアクションですね!』




さも当然のように現れた千羽。

折角の歓迎会(宴)に出られないなど寂しいという理由で来たらしい。

案の定、マルコに怒られている。




マ「お前は病み上がりだろぅが!!!部屋に戻れぃ!!!」

『嫌です!もう治りました!』

ジョ「無理はせん方がいいぞ?」

『してませんよ?』

ハ「千羽、マルコとジョズの対応が全く違うね(笑)」

ビ「それだけマルコには心を許しているんだろう」

『え、あ、はい。そんな感じです。』

サ「ビスタはなんでビビられてんだよ(笑)」

ビ「俺が聞きたい…。」




千羽が参加すると、すぐさまその周りは人でいっぱいになっていた。

エースはそれを見て、千羽が皆に大切にされているのだと、皆にとって千羽が大切な存在なのだと認識する。




エ「なんか、いいな、こういうの。」

サ「楽しいだろ?」

エ「ん?あぁ…。」














大分時間が過ぎ、皆が静まり返った頃。

各々帰ったものもいれば、その場で眠りに入っている奴らもちらほら。

まだ起きて飲んでいるのは、エース、マルコ、サッチ、千羽くらいだ。

千羽はお酒はあまり飲んではいないが、サッチに絡まれている。

それにマルコがいい加減にしろと喝を入れていた。




サ「んなに焼くなよ〜マルコたいちょ〜〜」

マ「焼いてねぃよぃ!!!コイツが嫌がってるからやめろ!!」

『サッチお酒臭い!!!』

サ「同じだろ〜〜」

エ「サッチ、そんなに酒弱いのか?」

マ「千羽が来たからだろ…ったく。ほら撤退だよぃサッチ!!明日の朝飯あんだろぃ!!!」

サ「ん、そーだったそーだった!んじゃ!またね千羽ちゃん!」

『ん、またなフランスパン!』

サ「それ久々に聞いたー」




マルコに肩を借りながらへらへらと部屋を出て行ったサッチ。

完全に酔っ払ったおっさん化していたことは、きっと記憶から抹消されるのだろう。




残されたエースと千羽は、静かになった部屋で笑っている。




エ「お前、ほんと愛されてんだな」

『どうなんだろ。皆優しいだけだよ。』

エ「そりゃ同感だ。」

『ふふっ』




コップ一杯のお酒で顔を真っ赤にしている千羽と違い、
どれだけ飲んだかわからないエースはほろ酔い程度のようだ。

千羽はニコニコしながら、なんだかふわふわしている。




エ「お前は酒弱いな?」

『強いし!』

エ「ははっ、そうかよ」

『ほんとに強いもん!!』

エ「っ!?わ、わかったからそんなに飲むな!!」

『っ〜〜〜はぁ…』

エ「サッチより質悪そうだ…。」




千羽からコップを取り上げ、なだめると、不貞腐れてしまったご様子。

きっとこういうところもほっとけないのだろうな…などと苦笑いをしたエース。




しばらくへそを曲げていた千羽が、天井を見上げたままつぶやき始めた。




『エースはすごいね』

エ「ん?」

『すぐに打ち解けて。』

エ「そうか?普通だろ」

『親父様にも立ち向かえるなんて…』

エ「全く歯が立たなかったけどな?」

『白ひげのマークを背負う覚悟なんて…簡単に出来ることじゃないよ』

エ「…お前らのおかげだよ」

『私たち?』

エ「ああ。お前ら見てたら、羨ましくなったからな。」




横目にエースを見つめると、なんだか嬉しそうだった。

そういえば、エースは家族をとても誇りに思っていたと思う。
自分の知ってる範囲でも、慕い慕われていた。そんな輪の中に、入った最初なのだ。

これから築くであろう絆の、初めの一歩。

それをこんなにも近くで見られるなんて、奇跡なのかもしれない。




『いいなぁ…エースは…。』

エ「?お前この間から変なことばっか言うな(笑)」

『変?』

エ「お前も白ひげ海賊団の一員だろ?何がそんなに羨ましいんだよ」

『…ここにいられることだよ?』

エ「??やっぱ意味わかんねぇ」

『…』

エ「俺はお前の強さのが羨ましいぜ?」

『…』

エ「俺なんかに辛抱強く付き合えるとことかな」

『…だって…エースとは…仲良くなりたかったから…』

エ「っ!?」

『もっと…エースのこと…知り、たか…た…』




コトリ、と、エースの肩が重くなる。

その熱に視線を向ければ、スーと吐息を立てる千羽の無防備な寝顔があった。




エ「ったく、もう少し警戒した方がいいと思うぜ?」

『…スー…』

エ「はぁ…」




エースは千羽を抱え、部屋に連れて行った。




少し早い鼓動は、きっとお酒を飲んでいたせいだと、言い聞かせ。














次の日、目を覚ました千羽は、途中から記憶が曖昧だったのと、エースに運ばせてしまったことを、本人に謝りにいったという。




マ「千羽、お前は今後、酒は禁止だよぃ!!」

『はい…。以後、そうします。』





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