K

□その涙の理由
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目を開けると、オデコが見えた。

小さく寝息をたてる、私の好きな人。

こんなに近くにいるのに、

すごく遠くに感じるのは、

きっと今見た悪夢のせい。




夢の中でも泣いていたせいか、また涙が零れ落ちた。




グスン。




鼻をすすり、一度目を閉じる。

またその夢を見そうで、眠るのが怖い。




「どーした?」

『っ』




強く目をつぶると、涙が溢れてくる。

それを拭ってくれたのは、目を覚ました彼。




「千羽。どーしたん?」

『…ぁ、の…』

「怖い夢でも、見た?」

『…うん…』




優しい瞳。普段おちゃらけているけれど、こういう時は人一倍大人。

涙を拭い、そのまま私の頭を撫でてくれる。

ゆっくり、壊れないように。




「泣くほど怖かった?」

『………かずくんと、別れる夢…』

「…そっか。でも、別れてないだろ?」

『…うん。』

「大丈夫だって」

『……うん。』

「千羽?」

『?』




まだ止まらない涙。

その目に、彼はキスをしてくれた。

そして小さく笑ってくれた。




「超好き。」

『っ』

「スゲー好き。」

『…んっ』

「チュッ…っん…大好き…っ千羽、は?」

『ハッ…ん、好き…』

「よかった…ん、チュッ」




ぎゅっと抱き締められながら、頭を撫でる。その手はとても暖かくて、おちつく。

夢が、夢なんだって、感じさせてくれる。




「千羽、もっと、愛してあげるな?」

『……うん。かずくんで…いっぱいに、して……』












離れなきゃならない日を思うと、時々見てしまう悪夢。

その度に、彼は心も体もあいしてくれた。

だから、

私は今でも、ずっと彼の隣で笑ってられる。




【その涙の理由】




貴方が全て受け止めてくれるから、

涙ごと忘れられるんだよ。




*fin*




2015.7.31
制作者:柘榴千里
 

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