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□あいたくてたまらない〜AnotherStory〜
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千羽が高校に入ってから、俺の1日が大きく変わった。

何気ない朝の登校、帰りの待ち合わせ、下校中の寄り道。

隣には、千羽がいない。




「っ…あー今日から迎えに行かなくていいんだった…」

朝弱いくせに、大丈夫なのかよ…。



「…ふーん、やっぱ高校ってのは忙しいんかねぇ…」

メールそっけねぇな…。ま、しゃーねぇか…。




「…そういや声…聞いてねぇなぁ…」






当たり前に毎日聞いてた千羽の声を、どのくらい聞いてないだろう。

メールのやり取りはあっても、電話はしてない。




忙しい…よな…。




「なんか…ちっとモヤモヤすんな…」




寂しいってやつ?

そう感じた瞬間確信した。

俺には千羽が必要不可欠だったんだなーって。今更だけど、やっぱ幼馴染みっつーのは、当たり前過ぎてわかんねぇもんらしい。

小学校の頃はわかんなかったけど、
今なら確実に言える




「俺、千羽のこと好きすぎじゃね?」




でも




告白は出来なかった。




この関係が…




幼馴染みという大切な時間が全て、




壊れてしまいそうだから。




「どう考えても、あいつは俺のこと男として見てねぇよな…」




そう考えたら、少し離れてるくらいが丁度いいのかもしれない、なんて思ってしまった。




だから、会うことも少なくしたし、電話も控えるようにした。

高校も、バスケ中心に考えて選んだ。




なのに、想いは募るばっかりで…。








「はぁ…」
「高尾、俺の傍で溜め息をつくな。こっちまで運気が下がるのだよ。」



相棒になりつつある秀徳(うち)のエース様に呆れられる始末。




「だって真ちゃん!!この間たまたま千羽のこと見かけたと思ったら…なんか…チャラそうな奴とゲーセンいたんだぜ!?あれぜってぇ彼氏だよな…」
「知らん。確かめればいいだろう。何故そうもしないうちに決めつける。」
「彼氏って言われたら立ち直れねぇし!?んな勇気あったら告白にでも使ってるっつーの!!!」
「ふん…ヘタレが。だからお前はダメなのだよ。どうなるかわからないなどと、そんなことを考えている前にもっと人事を尽くしたらどうだ。」
「人事を尽くすったって!!」
「…」




真ちゃんの言う通りだ。

俺は逃げてるだけで

何もしてない。

幼馴染みという殻にすがり付き、

ただ踏み出せないでいる。




「それでも…やっぱ」
「1位なのだよ」
「は?」




ふいに真ちゃんが呟いた。

恐らく、お得意のおは朝占いだろう。




「なに、かに座、1位だったわけ?よかっ「違う」…え?」
「高尾、今日のラッキーアイテムは、昔の写真だそうだ。」
「…それって」
「人事を尽くして天命を待つ。すれば、天は必ず示してくれるのだよ。」
「…アホくさ」




俺はそう呟きながらも、待受画面を、昔千羽と撮った写メに登録し直し、家に着くやいなや、アルバムを引っ張り出してきた。




「アホは俺だよな…。」




眠れない頭を落ち着かせるように目をつむっても、浮かぶのは千羽の笑顔だった。




「ほんと…何で…こんなに…」




そしてそのまま、浅い眠りについた…。























いつの間にか、時間が経っていたようで、時刻は0時に近づいていた。

まだ目が覚めない、ふわふわした感覚。




ー…かずくん。




「千羽?」




いよいよ幻聴まで聞こえたかと半ば呆れる思いをよそに、俺は千羽に電話をしてみた。




「もしもーし、千羽?」
『はい!』
「なんだよその返事」
『いや、突然、びっくりして…』




やっぱこの声、落ち着くわ




「え、あー、なんつーか…呼ばれた気がしたんだよな…」
『…え…』
「なーんてな!何いってんだろーな」




ひかれるのが怖いと思っておちゃらけてみるものの、きっともう手遅れなんだろーな。

相手の思いがわからないことが、こんなにも自分を臆病にさせるんだと、最近実感してる。




でも…




『会いたいよ…』



ー…1位なのだよ。
ー…人事を尽くしたらどうだ。
ー…天は必ず示してくれるのだよ。




真ちゃん

アホでも貫きゃ

かっこよくなっかな?




「やっぱ呼ばれた?」
『呼んだよ…かずくん…』
「今から行くわ」




もしかしたら
勘違いしてたかもしれねぇじゃん。

お互い同じ気持ちで
すれ違ってたってこともあるわけで…




現に今、

俺と同じ気持ちでいてくれたみてぇだし。




「今すぐ会いてぇんだわ…」
『え、ちょ、ちょっと!?』
「待ってて!!」




幼馴染みじゃなくなることは
まだ正直怖かった。

けど

全力で走ってる今も感じるこの思いが
どんどん強くなる一方で、

もう伝えるしか方法が見つからねぇ。




なぁ千羽

今すっげーモドカシイ

早く会いてぇ

会って、

伝えたい。









「はぁ…はぁ…わりぃ、遅くに…」
『かずくん…』
「ちょ…全力…すぎた…」
『こっちこそ、ごめんね…来てくれてありがと…』
「はぁ…はぁーっ…千羽」
『…会いたかったよ、かずくん!』




気付いたら抱き締められていて、

自然と俺も抱き締め返す。




【あいたくてたまらない】

〜そんな自分に気づいたから〜




もう少しこの温もりに浸って、

そうしたら、ちゃんと伝えよう。




「俺、千羽のこと…」









*fin*









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