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□ホットミルクには…
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少し肌寒い陽気に比例するように

その日

真が風邪で休みになっていた。




「…うぜぇ」
『全く覇気ないね、つらい?』
「別に。」




お見舞いに来ると、また家に一人、部屋のベッドの中にいた真。

両親は海外出張が多い。

だからこういうときは、私が看病にあたる。




『とにかく何か食べないと、薬飲めないでしょ?』
「…食いたくねぇ」
『餓鬼か!』
「ガキでもいい…」
『っ…調子狂うなぁ…』




布団に顔を隠して力無く話す彼は
いつもと別人。

あの上から目線な自信過剰の花宮真は何処へ行ったのやら。




『ねぇ…まことー?』
「…」
『つらいのー?それとも拗ねてる?』
「拗ねてねぇ」
『あぁ…』




今日は本当は、他校との練習試合があったらしい。

なんだか強豪校と試合ができるみたいで、前から張り切ってたのが、これだ…。

たぶん真は拗ねてるのだ。

というか…




『心配なの?皆のこと』
「…」
『熱でると素直になるねー真は!』
「るせぇ…」
『大丈夫だよ』
「……」




少し顔を出して睨む今の彼は全く怖くない(笑)

むしろ可愛くて可愛くて、

私は頭を撫でた。
勿論ますます眉間にシワがよってしまう。




『…大丈夫。皆、ちゃんとやってるよ。』
「だといいんだけどな…」




そのまま、真のおでこに貼られた冷えピタを取り換えると、気持ち良さそうに目を瞑った真。




「お前の手…気持ちいいな」
『っ…ど、どーしたの真!?冷たいのは冷えピタでしょ!?』
「いや…」
『っ…真』




真の首もとは、凄く凄く熱くて…

その熱のせいか、その行為にドキドキしたせいかはわからないけど、
私の手はどんどん熱くなっていった。




「やっぱ…千羽がいると安心するみたいだ…」
『ほんとに熱にやられてるね!!!』
「かもな……千羽?」
『なにっわっ?!』




私を引き寄せて抱き締めたかと思うと、
真は耳元で囁いた。




ー…寒い。あっためて…。









「ホットミルク、いれてくれない?」
『っっっまことぉ!わざとっそーやって…!!!』
「どーしたの…?耳まで…真っ赤。もしかして…風邪、移った…?」





弱々しいのに、その笑みは非常に勝ち誇っていた。

不覚にもときめいてしまったなんて、絶対言わないでおこう。




ムカつくけど、今は早く、真が本当に元気になってくれるのを願って…









【ホットミルクには…】




ビターチョコレートを添えてあげることにする。




(ふざけてないで!早く元気になってよね!!)
(…チョコレート、カカオ70%じゃねーだろ)
(注文つけるな!!!)




*fin*
 

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