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□優しさに甘えて
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夏といえばお祭り!
可愛い浴衣に身を包み、いつもと違うふわっとヘア。
下駄は履きづらいからサンダルで、髪には…




『まこちゃん!ねぇねぇ!カンザシ!可愛い?』
「ふはっ。お前に似合うと思って買ってやったんだ。可愛くねぇわけないだろ?バーカ」
『よかったぁ』




彼に貰った花柄の簪。
浴衣に合うヘアスタイルの話をした時に、まこちゃん…私の彼、花宮真がプレゼントしてくれたのだ。

彼、花宮真は、世間(バスケ界?)では、悪童などと呼ばれている、が、私には全然理解できない。
バスケの試合は見たことない(見せてくれない)からなにも言えないのだが…

私にはとても優しい。

少し言葉は荒いけど、嫌なことはしない人だ。




「ったく…人が多すぎだクソッ」
『あー!まこちゃん!リンゴ飴食べよう!』
「わかったから待て。走るな。店は逃げねぇだろ。」
『そーだけどぉ!』




彼の腕を引っ張ろうとすると、逆に引っ張られてしまった。
がっしりと手を握って、少し痛い。

あれ?怒ってる?




『はい!まこちゃん!』
「おう。」
『ブドウ飴も買おう!』
「どーせ食いきれねぇんだからリンゴ食ったらにしろバーカ。」
『むー…はーい』




なんやかんやで過保護な所も好き。

案の定リンゴ飴を、もういらない、と言うと、ものっすごい嫌な顔をしながらも代わりに食べてくれたり、射的の景品にあったウサギのぬいぐるみをガン見していると、なにも言わずに取ってくれたり…※5、6回やってた。



『ウサちゃんかわいー』
「っち…手繋いでなきゃ1発で取れた…。」
『なんで手離さなかったの?やっぱりやりにくかったんじゃん』
「お前がチョロチョロするからだろ」
『してないよぉ…』




なんでかな?今日は、ずっと手を握ったまま。

嫌じゃないけど…少し不便なこともあるわけで…




『まこちゃん…これじゃかき氷食べられないよ!』
「腹壊す。やめとけ。」
『氷は私の命だぁぁ!!!』
「ッチ…」
『し、舌打ちされたぁ…』
「っ……悪かったよ」
『ふぁっ!?』
「なんてゆーかよバァカ」
『っ』




お馴染みの悪態を着くまこちゃん。
でも、
やっぱりかき氷を1つ買ってくれた。

しかし食べづらい。



『引っくり返すぅぅぅ!!』
「ったくうぜぇ」
『うわっ』




手を離してくれた。
かと思うと、ガッシリと肩を寄せられる。

これはこれで食べにくいのだが、まぁ、これ以上物言えば機嫌を損ねてしまうかもしれない。

せっかく機嫌が良さそうなのだ。私も美味しく氷を頂くことにする。




かき氷がなくなった頃。また手を繋ぎ歩く。









高い高い空に咲く花。

キラキラと落ちていく火は少し切ない。




『綺麗だねー』
「…」
『ね!』
「ん?あー」
『…』



空を見上げている彼の横顔は、花火とは違う綺麗さがあった。




『…そろそろ、帰ろっか。』
「っ…」



ずっと握っていた手の力が強まるのは本日2度目。

今度はたぶん、帰りたくないという意味。






『楽しかったね』
「…あー」
『また来たいね』
「…今度は」




暗くなった空。

どんどん人々も帰路に着く。




「手持ち花火で我慢しろ。疲れた。」
『えー!やだぁ!』
「………だろ…」
『ん?なに?まこちゃっ…』



静まり返った暗いお祭り跡。




私は唇に当たる彼の暖かさに、顔を赤くした。




「できねぇだろ…人がいたんじゃ…」
『あ…、うん…、そ、だね…』
「俺がどんだけ我慢してたと思ってんだよ…」
『そ…なんだ…』
「っ…リンゴ飴みたいになりやがって…襲うぞ(ボソッ)」
『え?』
「っ帰るぞ。送ってく。」
『…うん。』




来年は二人で手持ち花火がいいかな?
なんて少し思ったことは、まこちゃんには黙っておこう。

その代わり、

今は彼の腕に、ぎゅーっとしがみついて帰ることにした。




【優しさに甘えて】




(早く、まこちゃんに追い付きたい…)
(ふはっ、当分無理だな)




*fin*

 

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