M
□優しさに甘えて
1ページ/1ページ
夏といえばお祭り!
可愛い浴衣に身を包み、いつもと違うふわっとヘア。
下駄は履きづらいからサンダルで、髪には…
『まこちゃん!ねぇねぇ!カンザシ!可愛い?』
「ふはっ。お前に似合うと思って買ってやったんだ。可愛くねぇわけないだろ?バーカ」
『よかったぁ』
彼に貰った花柄の簪。
浴衣に合うヘアスタイルの話をした時に、まこちゃん…私の彼、花宮真がプレゼントしてくれたのだ。
彼、花宮真は、世間(バスケ界?)では、悪童などと呼ばれている、が、私には全然理解できない。
バスケの試合は見たことない(見せてくれない)からなにも言えないのだが…
私にはとても優しい。
少し言葉は荒いけど、嫌なことはしない人だ。
「ったく…人が多すぎだクソッ」
『あー!まこちゃん!リンゴ飴食べよう!』
「わかったから待て。走るな。店は逃げねぇだろ。」
『そーだけどぉ!』
彼の腕を引っ張ろうとすると、逆に引っ張られてしまった。
がっしりと手を握って、少し痛い。
あれ?怒ってる?
『はい!まこちゃん!』
「おう。」
『ブドウ飴も買おう!』
「どーせ食いきれねぇんだからリンゴ食ったらにしろバーカ。」
『むー…はーい』
なんやかんやで過保護な所も好き。
案の定リンゴ飴を、もういらない、と言うと、ものっすごい嫌な顔をしながらも代わりに食べてくれたり、射的の景品にあったウサギのぬいぐるみをガン見していると、なにも言わずに取ってくれたり…※5、6回やってた。
『ウサちゃんかわいー』
「っち…手繋いでなきゃ1発で取れた…。」
『なんで手離さなかったの?やっぱりやりにくかったんじゃん』
「お前がチョロチョロするからだろ」
『してないよぉ…』
なんでかな?今日は、ずっと手を握ったまま。
嫌じゃないけど…少し不便なこともあるわけで…
『まこちゃん…これじゃかき氷食べられないよ!』
「腹壊す。やめとけ。」
『氷は私の命だぁぁ!!!』
「ッチ…」
『し、舌打ちされたぁ…』
「っ……悪かったよ」
『ふぁっ!?』
「なんてゆーかよバァカ」
『っ』
お馴染みの悪態を着くまこちゃん。
でも、
やっぱりかき氷を1つ買ってくれた。
しかし食べづらい。
『引っくり返すぅぅぅ!!』
「ったくうぜぇ」
『うわっ』
手を離してくれた。
かと思うと、ガッシリと肩を寄せられる。
これはこれで食べにくいのだが、まぁ、これ以上物言えば機嫌を損ねてしまうかもしれない。
せっかく機嫌が良さそうなのだ。私も美味しく氷を頂くことにする。
かき氷がなくなった頃。また手を繋ぎ歩く。
高い高い空に咲く花。
キラキラと落ちていく火は少し切ない。
『綺麗だねー』
「…」
『ね!』
「ん?あー」
『…』
空を見上げている彼の横顔は、花火とは違う綺麗さがあった。
『…そろそろ、帰ろっか。』
「っ…」
ずっと握っていた手の力が強まるのは本日2度目。
今度はたぶん、帰りたくないという意味。
『楽しかったね』
「…あー」
『また来たいね』
「…今度は」
暗くなった空。
どんどん人々も帰路に着く。
「手持ち花火で我慢しろ。疲れた。」
『えー!やだぁ!』
「………だろ…」
『ん?なに?まこちゃっ…』
静まり返った暗いお祭り跡。
私は唇に当たる彼の暖かさに、顔を赤くした。
「できねぇだろ…人がいたんじゃ…」
『あ…、うん…、そ、だね…』
「俺がどんだけ我慢してたと思ってんだよ…」
『そ…なんだ…』
「っ…リンゴ飴みたいになりやがって…襲うぞ(ボソッ)」
『え?』
「っ帰るぞ。送ってく。」
『…うん。』
来年は二人で手持ち花火がいいかな?
なんて少し思ったことは、まこちゃんには黙っておこう。
その代わり、
今は彼の腕に、ぎゅーっとしがみついて帰ることにした。
【優しさに甘えて】
(早く、まこちゃんに追い付きたい…)
(ふはっ、当分無理だな)
*fin*