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□やっぱり君が好き
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『甘い恋10題』
*6*
「ほらよ」
『ありがとう花宮君』
「んー」
『やっぱ紅茶おいしいわー』
「よかったな」
制服デートが憧れだった。
まだ夕日が上る前の学校帰り、
私の隣を歩くのは、私の制服とは少し型の違うイケメン君。
『花宮君は何飲んでるの?』
「サイダー」
『おいしい?』
「不味かったら飲まねぇよ」
『頂戴?』
「あ?自分のあんだろ」
表面は優等生のいい子ちゃん。
中身は、口が悪くて性格最悪な悪童。
でも私には、
なんやかんやで凄く優しい彼氏。
「ほら」
『んー!やっぱ炭酸はサイダーに限るね!』
「別に」
『えーじゃあ何でサイダー選んだのよー』
「たまたまだ」
何でこんなに優しくしてくれるのか
わからない。
好きだからとか、
守りたいからとか、
そーゆーんじゃないと思う。
たぶん…私が…
『うそやーんw目逸らして遠く睨むの、嘘ついてる証拠だもーん』
「るっせーよバァカ!」
『ぷぷぷーっ』
「アホ」
『っ…』
そう、私が
忘れられないからだと思う。
―…ダァホ
不意にフラッシュバックした
昔の記憶。
たった1年…
でも、
私にとって、とても長い1年…。
「っ…わりぃ」
『んー?なにが??』
「…なんでもねぇ」
―
誠凛高校と霧崎第一高校とのバスケの試合。
霧崎のある選手によって、
誠凛のある選手が怪我を追った。
「くそっ」
「日向やめろ!さっさと整列して、木吉のとこにいこう」
「伊月…そうだな。」
『木吉君…大丈夫かな』
「大丈夫なわけねーだろ!」
『っ…ご、ごめん…日向君…』
何も知らなかったから私は…
身勝手な言葉で、彼を傷つけた。
「…いや。」
『…そ、それにしても…霧崎の人、強かったね…』
「強い?客席からはそう見えてんだな…」
『え…?』
「もーいいから帰れ。俺は木吉んとこ行ってくる」
『あ…はぃ…』
凄く冷たい目線を浴びたら、
とても悲しくなって、
私は帰るに帰れなかった。
その時だ。ちょうど、花宮君に会ったのは…。
『っ…ぅっ…』
「…大丈夫?」
―
花宮君は、同情してくれたんだと思う。
もしかしたら、誠凛とわかってて、バスケ部との関係もわかっててわざと近づいたのかもわからない。
けど、
それでも私には、ジュウブン優しかった。
「今年は…」
『ん?』
変な空気を断ち切った花宮君の言葉。
「誠凛をぶっ潰す」
『っ…程々に、お願いします…』
「ふはっ…甘ぇな千羽はよ…」
『…花宮君も、私に甘いよ』
「…気に入らねぇ」
『ごめんて』
「ちげーよ」
わかってるよ。
私の気持ちは、まだ花宮君に向いてない。
花宮君の声なのに…
錯覚してしまう…。
デートしてても
一緒に帰ってても
ジュースおごってもらっても…
こうして手を握ってる時だって…
―…日向君は、もっと躊躇しながら握ってたっけ…。
彼との違いを感じてしまう。
「違う…」
『うん…ごめんね…』
「…今年こそ…」
【やっぱり君が好き】
花宮君の瞳を、見て見ぬふりをする私の心は、
やっぱりまだ日向君のところにある…。
(インターハイで…)
(応援、してるよ…?)
*fin*