【名前】みるく

【二つ名】甘い毒蛇(スウィート・コブラ)

【性格】
実験の事になると変態になるマッドサイエンティスト。
基本的に物腰は柔らかであるが保護対象を傷つけるような言動をすると一気に辛辣になる。

【容姿】
黒髪を下のほうで緩く結んでおり、常時白衣。
小さな丸眼鏡を実験時のみ着用。うにゃほどではないが長身。

【武器】
二つ名通りに化学薬品。気が乗れば化学兵器も作って使う。

【備考】
お菓子作りなら任せろー バリバリ
友達を放っておけないという名目で自分が弱者だと推定した少女を保護対象に入れてしまう。
その少女は彼女の依存対象になり、過剰な保護を受けることになるだろう。(但し、その対象は一人)
只今の保護対象は心羅。

【参考用短編小説】
 眠りを誘うような日差しが天高くから落ちる時間帯。白衣の少女が隣室のキッチンに立っていた。
清楚なキッチンの上には卵が十個と砂糖の袋、片栗粉の大入り袋が置かれている。
手を洗うために流されていた水道を止め、丹念に手を拭いた。
石鹸で洗ったため、それなりに綺麗になったであろう。


 ――これから作るお菓子の事を思いながら、少女、みるくは追憶に耽っていた。


 逃げるように生きる泥まみれの生活の中、「一つの正義」を名乗る彼女達に出会ったのだ。
それは此処の一般で言う敵だが、みるくは“彼女”を消した一般の正義というものを潰せるのなら何でもいいと思い、手を取った。
入隊当時はその特異な性格のおかげで見事にドン引かれたが、それでも突き放すことはしないまま。
嬉しかったのであろう。「気分ですよ」などと言いながら、いつか“彼女”に作ったお菓子を出すなんて調子に乗ったこともあった。
美味しいと笑顔で褒めてくれて、不甲斐もなく泣いてしまったあの時は、まだ隊員が少なくて良かったと思う、本当に。


「にしても、ちょっと量が多すぎますかね」


 なにせ、四十人分ですしね。心の中でため息を吐きながら、実験で培われた目で片栗粉を分量分投入し、手で捏ね始めた。
手に纏わりつく冷たいながらもそれぞれ違う感触が、実験を連想させて心が静かに弾んでしまう。
ボウルの中身は混ぜていくごとに弾力を伴って、形を持っていった。

 此処はみるくが入ったときより大分人数が増え、女帝を筆頭にしての革命軍の勢力は日々拡大していっている。
いつの時代でも反逆は付き物であり、このご時世じゃあそう珍しくもない。それでも、どちらが正義かなんて勝っても負けても決定されないものだ。
一人に、一つの正義がある。ただそれだけのこと。目的は違えど、方向性が同じなのであるから味方するに越したことはないであろう。
此処での仲良しごっこも悪くない。それに、充実した実験――人体実験は控えるように言われているが――もできるのは彼女にとって好都合だった。

 調理用具が整頓された棚を開いて、周りの用具を汚さないように気をつけながら天板を取り出す。
シートを引き、片手で小指の第一関節より一回りほど小さい直径の丸になるように生地を丸めて、等間隔に置いていった。
その作業が終われば天板を入れて、トースターのスイッチを手馴れた動きで入力する。量が多いので多めに取らなければならない。

 争いごとに関わっているとよく、怖くないかと聞かれる。
彼女の答えは「YES」だ。怖いことなど、恐れるものなどないように表では振舞っているが、恐怖対象など数多とある。
何を失うのも怖い、自分を縛っている記憶を失うことでさえ恐れる怖がりな彼女なのだからそれも当然だった。
だから、失うのが怖いのなら、失わないように守るだけと自己暗示を続ける。

 トースターの中のお菓子が丁度いいぐらいに焼けてきていた。
急いでスイッチを切ってキッチン台を見ると、いつの間にか用意されていた花柄のビニール袋の中にこれと同じ、少し冷めたお菓子が盛られている。


「……無意識で作ってた?」


 彼女が時計を見やると、さっきより幾分も時間が経っていた。
一つの物事に集中すると時間を忘れて、自分が何をしているのかも忘れるのは彼女の悪い癖である。
それでもその白い粒は見事な出来栄えであり、みるくは自分のことながらに流石だと自画自賛した。
ミトンをつけて天板を取り出すと、懐かしいいい香りが部屋を包む。
菜箸で一つ一つ袋の中に入れていけば袋はあっという間に完成したたまごボーロで溢れた。
あまりの量に全員が揃っても食べ切れるのかと不安になる。
まあ、とりあえず今日の会議中に摘むお菓子の分にはぴったりだろうと考えないことにした。


「それでも、もう一人じゃないですもの」


 「私は大丈夫です」袋の口を閉じて仲間の顔を思い浮かべる。
彼女が囁いた言葉は誰に告げたものなのか――それを知る者は、彼女しかいない。

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