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□1章
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「ここで喰種研究の権威である……小倉先生にお話を伺いたいと思います。」

司会を担っている女性—-藤梨華怜は今人気のお天気おねえさんで有名だ。

カメラは彼女の隣に座っている男性に変わる。

「そもそも喰種があまり頻繁に人間を食べなくても生きていけるということは知っているね?」

小倉は、藤梨へ問いかける。

「そうなんですか!?……あれ、でもよく喰種による殺害事件って見かけますよね?」

「いいね、きみは。何も知らなくてもそこに座れて……」

小倉は、藤梨を見ると軽く鼻で笑った。
今、全藤梨ファンを小倉が敵に回したことは明らかだろう。

「まあ、いいや」

「喰種ってのはね、死体一つあればひと月やふた月生きれるんだよ。だから、無闇やたらと殺す必要はないんだ。寧ろ、こんなにも頻繁に殺せば危険地域として喰種捜査官がその区に増員されてしまう。
それは、きっと彼等としても望ましくないだろうしね」

「では、何故喰種はお互いに殺し合いなんてしたんでしょうか?」

藤梨は、小倉の話を聞いて首を傾げる。


「恐らく、領土争いだろう」

「領土争い?」

藤梨がオウム返しすると小倉は、真剣な表情で頷いた。

「人間に個人の領域、いわば縄張り″という意識があるように彼等喰種にもある。そして、仲間意識というものもね。……きみは、喰種が何故絶滅することなく生き残っていると思う?」

「え……単純に私たちヒトよりも上の存在。つまり、食物連鎖におけるヒエラルキー的に上だったからじゃないでしょうか?」

少し考える素振りをみせた藤梨だが、意外にもほんの少しばっかし賢い様な言い方をした。
個人的には本当に意外だった。絶対に顔と若さ、今が旬だからというようないわば大人の事情というようなものだと思っていたからだ。

小倉も感じたことは同じなのか心なしか嬉しそうだった。

「それも理由の一つだろう。でも、私はね。
もっと人間に近い答えだと思っているんだ。
君も一見して誰が喰種なのかヒトなのか分からないことくらいは知っているよね」

「はい、それくらいは……」

「彼等は、我々の中に溶け込み生活している。
しかし、我々人間に個体差というものがある様に喰種にも同じことが言える。
知的な生き物は、群れを成す傾向にある。これらを合わせて考えれば自ずと答えはでる」

「つまり、彼等はある特定の範囲にグループを作り行動している″んだ。
強い者が弱い者たちへ食べ物を提供する。
そうすることにより弱い者たちの管理が可能になる。
食事の為の殺害を、必要最低限に抑えられるようになるよね。そうやって、穏やかに暮らしたい喰種たちは生きていくんだろう」

「えーっと、つまり今回の゛喰種大量虐殺″はグループ内の粛清……?」

小さく手を挙げて藤梨は確認をとる。
まるで、小学生と教師のようだったが今は全く関係のない感想だ。

「ああ、その通り……」

「ねえねえー、それ面白いのー?」

振り返れば、ヒロがソファーの背もたれに足を引っかけ逆さま状態でケータイを弄っていた。

「うーん。……普通、かな」

別段、面白い訳ではない。真相を全て知っているミステリー映画を観ているのと同じ感覚だった。なぜなら、

「ん、あれ?それってパックたち?」

勢いよく起き上がりソファーに座りなおしたヒロが指差す。
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