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□究極の愛はカニバリズム
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「月山さんっ!!!?」


余りにも帰りが遅い彼を心配し探してみると教会の真ん中血だまりにうずくまり何やら動く人影。


名前を呼ぶと影はピクリと反応した。


「月山さっ……」

振り向いた彼の瞳が普段とまったく違う、赫眼になっていたことに息を呑む。

そして彼の口元から滴り落ちる血が他の誰でもない月山さん自身であることを理解した瞬間全身が強ばる。


「……今は、来ないでもらえるかい…」


か細く聞き逃してしまいそうな程に小さな声だったが辛うじて聞き取れた。


その言葉に頭をふりゆっくりと彼に近付く。


「人の肉を食べれば月山さんの傷も治りますか?」


彼のすぐそばまで近付き蹲り投げ出された手をそっと自分の手で包み込む


そのまま彼の手を自分の心臓の辺りまで持っていきギュッと彼の手を自分に押し付ける。


私の心臓の鼓動が鮮明に彼に伝わるように──。



「月山さん、私を、食べてください」


一切、視線を上げようとしなかった彼は驚きに満ちた表情で私を見つめる。


「私を、食べて生きて欲しいんです」


ゆっくり彼の手を離し
自分の服に手をかける。


着ていたシャツのボタンを外し
肩までを出すと涼やかな風が微かに私の肩を撫でる。


露になった首元にゆっくり月山さんを抱き寄せる。


それでも、躊躇しているのか彼は動かない。



そんな彼の頭にそっと触れて


「月山さん、こんな言葉を知っていますか?

『究極の愛はカニヴァリズム』だそうですよ?」


少しだけ冗談目化して笑って見せる。


そんな私に月山さんは苦笑すると



「##NAME1##………本当にいいのかい?」


その問いに静かに目を閉じ頷く。





その後、私の肩に鋭い痛みが走る。


余りの痛さに意識が飛びそうになるが必死で繋ぎとめる。


夢中で私の肩から肉を貪る彼を優しく抱きしめる。

それに、反応するようにビクリと肩が震え食べることを躊躇するように動きが鈍くなる。


「大丈夫……大丈夫ですよ」

彼の頭を自分の傷口に押し付ける。


彼の僅かに開いていた口の隙間に私の血が入り込む。
その瞬間、戻りかけた彼の人間性は喰種の本能の中に埋もれていった。




彼によって、徐々に身体の自由が意識が奪われて行く中
私は、不思議と幸福感にすら近い感情に包まれていた。


これから先、きっと月山さんは誰か別の女の人を隣に置くのかもしれない。

その人と笑いあって私の事なんて忘れてしまう日がくるかもしれない……。


でも、こうして今彼の中で彼の血となり肉となることで私はこれから彼が上辺だけで付き合うどの女性よりも私は近くにいる。


だから……


「月山さん、ありがとうございます……」



そして私は、目を閉じた。
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