裏
□確信
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「また月が明るいわね……」
ベランダでブルマが見上げる夜空の中空には、銀色に輝く満月が浮かんでいた。
前回ベジータと寝たのはいつだったか。確かあの時も…満月だったかしら?
あれ以来、特に変った出来事も無い日々が続いていた。
一応、妊娠するかも、といった不安もあったが、いつも通り月のモノも訪れていた。
ベジータと言えば、毎日重力室や荒野での激しいトレーニングをもくもくとこなし、大量の食事を平らげ、いつの間にか寝る…という生活をおくっていた。
友人の悟空やその息子、ピッコロ、クリリン、天津飯たちも、毎日厳しい修行にあけくれているという噂は聞いていた。
ただし、ヤムチャだけは…ほとんど情報が入って来ない。
「はああ……」
ブルマの心と体は、ベジータに占領され始めていた。
毎日顔を見て、食事を出して、身の回りの世話をする。
毎日必死に身体を鍛え、努力する姿を見守ることしか出来ない自分が悔しくもあった。
「アイツ…いいところもあるのよね…」
ベジータの生い立ちは、普通の地球人からみれば、不幸極まりないものではあるが、その奥底に隠された人間らしさが、彼女にはだんだんと分かって来ていた。
例えば、普段の姿とはまるで違う、自分を抱いた時だけにに見せるほんの少しの優しさ。彼自身は全く意識していないだろう。だが、そのギャップが余計に彼女には新鮮だった。
この前は、自分を包みこむように抱き締めた。彼にとっては、本当に無意識だったかもしれない。
ふいにその時の暖かさを思い出し、ブルマの胸は高鳴るのだった。
「う…寒い……」
冷たい風が吹き、一瞬鳥肌が立つのを覚えたブルマは、名残惜しそうに月を見上げた後、眠るために暗い自室にもどろうと歩き出したその時、わずかな物音が聞こえた。