story
□柔らかな
1ページ/9ページ
セル戦後。
サア………
珍しくカメハウスのある南の島に雨が降った。
住民であるクリリンは、その日どうしても修行をする気にならず、自室の窓から外を眺めていた。
目の前に広がるのは、いつもの空といつもの海。
だが、違うのは、そのどちらもグレーであることだ。
窓からは、密やかに、優しい涼しさを含んだ潮風が運ばれて来る。
師匠である亀仙人は、用事で都に出かけていて、帰りは、明日以降になる。
静かなカメハウスに一人きり。
薄暗い室内。物音ひとつしない。
つい最近まで、仲間達と共に戦ったのが嘘の様な静けさだ。
『はあー…』
溜め息ひとつ。
一人。そう、今自分は間違い無くたった一人であった。
仲間たちはそれぞれ、自分の愛するもの、自分を必要とするものの許にもどっていっていた。