story

□きっかけ
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夕食後のひととき。
リビングルームには、ハンカチで涙を押さえるブルマの姿があった。
『…こうして、象の赤ちゃんは長い間お母さんのお腹にいて、愛を育まれるのです…』


いわゆるゴールデンタイム。
ブルマは、動物番組を見ていた。普段は余り見ない子供向けの動物バラエティ。何気なくチャンネルを代えていた時に目に入ったのだった。
様々な動物の赤ちゃんが、お母さんのお腹で育つ様子を特殊な方法で撮影したものなのだ。

「…うう。こうやって全ての哺乳類はお母さんが大事に大事に育てて行くのよね…」

ついつい感動の涙を流してしまう。
30歳を超えてから、少し涙もろくなったようだ。
いつもニコニコ顔のブルマのママが静かに隣りに座っている。
このママのお腹に私がかつて存在していたのだ。改めてそう思うと、とても不思議な気がした。
(私もいつかは愛する人の子を…)

しかし、現実には難しいのが分かっていた。あと二年後に襲ってくる人造人間に仲間達戦士が勝つとは限らないのだ。下手をすれば死ぬかもしれない。
ヤムチャとは、もう随分前に別れていた。
以前こっそり見に行った野球の試合。
試合後、労いの言葉をかけるために、球場の出口で待ち伏せしていたのだが、出て来たヤムチャが一番最初に手を振り親しげに寄添い歩き出したのは、若くてかわいらしい女の子であった。
最初はファンかと思ったのだが、暗がりで影がひとつになった時、全てを悟ったのだ。
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