short story

□相合い傘
1ページ/2ページ

ザアーーーー

「困ったわねぇ…」

ブルマは、カプセルコーポレーションから徒歩10分ほどのスーパーマーケットのひさしの下、叩き付ける様な雨が踊る道路を恨めしげににらんでいた。

夏の終りの天気は変わりやすい。
だがすぐ近くだから大丈夫、ということで、傘も、乗り物のカプセルも持って来なかったのだ。

『出て来た時は、曇りだったんだけど…読みが甘かったわねぇ』

手に持った荷物は、今晩のおかずに足そうと考えていた、新鮮なフルーツ。夏の終りを告げる梨である。
新鮮で瑞々しい梨を夫や息子に食べさせたくて、買い物袋には、1、2、3個。
珍しく、自分の足で買いにきたのだ。

「慣れないことをするものじゃないわねぇ…」
………

しばらく様子を眺めていたが、一向に上がる気配が無い。
「どうしよう……」
トランクスは学校、父母は共に不在。
「迎えに…きてくれるかしら…」
携帯電話を取り出して、我が家へと電話をかける。
長い長いコールが続き、あきらめかけたその時、やっと電話が繋がった。
『……………』
『もしもし?私、ブルマだけど…もしもーし?』
『聞こえている……』
『ベジータ!良かった…あのね、迎えに来てよ』
『はあ?オレは今トレーニング中なんだ。後にしろ』
『そういうと思ったわ。いいわよ、窓の外を見てくれる?』
『雨だ』
『だからあ、私かえれないのよ!だから電話してるのよ…』
『………』
『黙って無いで、迎えに来て……』
『…………』

ガチャリ…
ツーツーツーツー…

ブルマは携帯を握り締めたまま立ち尽くした。
『き、期待した方がばかだったわ……』
はあ…ため息ひとつつくが、この状態から抜け出すためには、川の様に水が流れる道路を帰らなければならない。
『仕方ない……』

ブルマはハンドバッグと買い物袋を抱え直した。

我が家…カプセルコーポレーションの方向を向き、

「よおい!ドンっ!」
バシャバシャバシャ

水を蹴散らし、足を取られつつ走る。

『ハアハア、角を…曲がって…』

ドンッ

誰かとぶつかり、誰かの傘が花びらのように宙を舞うと地面に落下し、そのまま雨を受け止める。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ