Go home
外はすっかり暗くなっていた。
11月に入ると、陽が落ちるのも随分早くなる。
寒さもだんだん厳しくなってきて、そろそろコートが必要そうだ。
「うわぁ〜〜！！」
事務所を出た、最上キョーコもそんな声を上げた。
近くにいた人は“ううっ寒っ”といいながら足早に歩いてゆく。
しかしキョーコは寒さを気にしているそぶりは感じられない。
キラキラと眼を輝かせ、ゆっくりと歩いている。
目線の先は…………昊だ。
「きれー満月だ！！」
まだ、漆黒まではいかない、薄墨の昊に大きな月が浮かんでいる。
東の昊からのぞいてまだ、１〜２時間程だろう。
ゆっくりと通りに出るまでの道を歩いていたが、通りに出るとピタリと足を止め、じっと月を眺める。
ここから駅までは90度方向変えていかなければならない。勿論月は視界には入らない。ずっと横を向いていれば可能ではあるが。
『折角綺麗な月だもん。もう少し眺めてよう。特にこの後予定がある訳でもないし……』
道行く人々の邪魔にならないよう、隅のフェンスに背を預けじっと月を眺める。
◆ ◆ ◆
ふわり
突然、頬に暖かいものが触れた。
「いつまで、そうしているの？」
驚く前に、優しい声が降りそそぐ。
顔を確かめなくったって、誰だか分かってしまうのは、自分の愛故か。
それとも、相手の有名税か。
前者であれば、嬉しいのだが。
「こんなに冷たくなって…。雪女みたいだよ」
「せめて、雪の女王って言って欲しかったです……。」
ぶぅ、とぶーたれると、ぐいっと顔を上げてやっと相手の顔を見る。
今だ頬にある手に自分の手を重ねると、にっこりと微笑む。
「お疲れ様です。敦賀さん」
折角眼があって、手にぬくもりを感じ、嬉しそうな目尻がその言葉に寂しさを滲ませる。
「ひどいな……私のキョーコ姫は、懐かしそうに月を眺めて、いつかこの腕から月へ帰ってしまうつもりなのかい？」
言いながら、しっかりと腕の中に引き寄せ、抱きしめる。
俳優、敦賀蓮とは違う、キョーコにだけ見せる、蓮だ。
キョーコはくすくすとわらうと、そのまま蓮の背中に手を回す。
「ふふっ……お疲れ様。……蓮」
「よくできました」
ぎゅう〜〜っと抱きしめ、額にキスを一つ落とすと、満足したように蓮が口を開く。
「どうしたの？」
「え？」
「月……見てただけじゃないでしょ？」
この男は、どうしてこうなんでも分かってしまうのだろうか？
それとも、キョーコが分かり易すぎなのだろうか？
「ん〜〜、最初はね、月が綺麗だなーって思いながら歩いてたの」
「うん」
「あんまり、綺麗な月で………だから……見たいなぁ……って…」
「くすくす……見てたでしょ？」
蓮は、それだけでキョーコの言いたいことはわかったようだ。
抱きしめている腕にきゅっと力が入る。
顔は、嬉しそうに……緩んでいた。
「月は見てるケド、……その、最近………逢ってないなぁって……//」
「そう？ だれと？」
恥ずかしくて言いづらいキョーコは、蓮の腕の中でもごもごと小声になって行く。
「………////」
「ちゃんと言ってくれないと…………ね？キョーコ」
「だからっ……！……………蓮と最近全然逢えなくて、お仕事忙しいのはわかってるし仕方ないけど」
「うん。でも寂しいのは隠せないね」
「……うん/// で、綺麗な月を見てたら、……れ、蓮と見たいなって。月を見る５分、ううん。１分でも良いから一緒に見たいな……って」
緩みきった顔が嬉しさとほんの少しの恥ずかしさで更に崩れてゆく蓮。
「ありがと。俺のこと考えてくれてて。 すごく、嬉しいよ」
「蓮も、寂しいって、逢いたいって、思ってくれてた？」
「当然 ……… 逢いたかった」
グッと力を入れて抱きあげると、キョーコの髪に顔を埋め、耳元に囁く。
「すごく、スッゴク、寂しかった。 有難う」
そのまま、ちゅぅと耳に唇を寄せる。
途端赤かった顔を真っ赤に染めあげ自分の耳を押さえるキョーコ。
キョーコが言葉を発する前に蓮はにっこりと笑う。
「帰ろう」
それは、秘密の言葉。
帰る先は、蓮の家。
キョーコを抱きかかえたまま蓮は歩き出す。
「冷えた体を温めないと。キョーコはお風呂とベッド、どっちがいい？」
「……っ/// さっ、さきに、お食事ですっ！！！」
「そっか〜、ベッドね」
「………？！ 違いますっ!！」
「くすくす、わかってるよ」
「その顔は、全然、分かってません！！」
「さすが、キョーコだね」
二人は仲良く(？)暖かな家へ
走り去った車を、月は黙って見送る
大丈夫。隣には愛しい人がいるから――。
Fin.
はい。お疲れ様でした〜(え？自分で？)
いつぶりだろう、SS書いたの………orz
本当に読者様にはご迷惑かけます。
もう、このまま閉鎖かという勢いですよね……
自分でも書けた事に吃驚です！！
えっと、前回が蓮様生誕記念で書いたんだから、
１年は………あっぇ━(*´･д･)━!!!
こっ、今年じゃない、去年の２月だよ……orz
ってことは、21ヶ月(1年9ヶ月)ぶりになりますか。
うわぁ……コレは、まずいな。
まあ、確かに忙しかったのは事実だが。
サイト続けていて良いのだろうか？
ともかく、お読みくださった皆様有難うございます！！
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