10/25の日記

15:07
地の青龍
---------------


ザックザック☆ グラグラ……。

野菜を切る音?

鍋が煮えたぎっている…… …

               ★

「……ここは…どこだ…?」


厨房で 怪しい料理が 出来上がってきている…
だが まだ その事実を 知る術を持たない九郎が 召喚されたのは 蠱惑の森の中。
しばらく歩くと 大きな建物を 発見したのだ。


「これは…… …邸…なのか???」


大きな邸は見慣れていても、洋風の建築物は初めて。
とにかく家主に話を聞こう。

弁慶も景時もいない今、自分ひとりで情報を収集。
この時空を打ち破り、現代で待つ望美達の元へ 馳せ参じなければ。


「むむ!」


壁伝いに歩いていると 優雅な花が 咲き誇る 庭に辿り着いた。


「見事な花だ」


「――…ふふふ。ありがとう」


「誰だ!!」


掛け声と同時に剣を抜き、間合いを取る。
戦に身を投じてきた 九郎の身のこなしは 時と場所を選ばない。


「流石だね。九郎義経…!」
パチパチと 小さなお手手で拍手。


「む…う?」
可愛い可愛い ミニキャラのダリウスと ご対面だ。

               ★

お互い なんとな〜く 自分達の置かれている立場を 理解している 九郎とダリウス。

「ではお前が 救援を必要としている…」
「そうだよ。俺も地の青龍。とは言っても、選ばれたのは ついさっき なんだけどね」


お邸に招き入れたダリウスは 美味しい紅茶と ルードが作ってくれたシュークリームで 九郎をおもてなし。


「…ふむ。中々の味わいだ。菓子も美味い」

紅茶をコクンとひと口。シュークリームにも 抵抗無く パクリと頬張る。


「キミは平安時代の八葉らしいが…西洋の食物に 慣れているようだね」
「譲という ゲンダイ? から着た八葉がいるのだ。そいつが料理上手で 未知かつ美味な食物を いつも作ってくれているのだ」


「へえー。料理…、ね」
チラリと 厨房に 目線を移す。


「…俺も さっき料理を していたんだ」
「お前も料理上手なのか」

「ふふ♪ 料理はね、好きなんだ」
「意外だな…だが この茶は美味だ」

「ふふふふふ…」
ダリウスは 楽しそうに 微笑んでいた…――

―♪―♪―△―▼―◇―■―〇―◆―□―▲―▽―♪―♪―

《別の時空で 困っている 八葉を助けたら 神子の 元へ 辿り着けるよ》


(俺と同じ地の青龍・・・・・♪)


まさか まさか。
何代かあとの 自分と同じ役目を持つ八葉が 尊敬するリズヴァーンと同じ 鬼の一族だったとは^^


「どうしたんだい?」
「いや…俺の剣の師匠が お前と同じ 鬼の一族だったから…先生の末裔…だろうか…?」

「うーん…一族の者は 昔から 転々と居を変えるからね。でも…」

見た目はまだミニ。
だが、深い群青で見つめられると…

…その姿は 本来のダリウスが 重なって見えてくるから 不思議だった。


「もし 一族の者が 過去で八葉に選ばれていたのなら…辛い思いをしていなかっただろうか…」
「…何故そうなるんだ」
「帝都では…一族の者は迫害され 不当な扱いを受けていたんだ…」
「む…京でも そういう話は 珍しくないな…」

昔々にも 暗躍する 鬼と八葉の戦いが たびたび 起こっていたらしい。

「だが そんな事は 関係ない。先生は弱かった俺を鍛え上げ…平家と同等に戦える術を教えてくださったのだ!」
「♪…キミは 人なのに 一族の者を 慕っているの?」


ダリウスの問い掛けは…
濡れ衣を着せられ、帝都を追われた一族の無念を思っての事…


「人だろうと 鬼であろうと。尊敬に値する者を 俺は認め、信じる」
「♪♪♪ キミは…見る目のある 綺麗な人間なんだね」


自分の信念は決して曲げない。
九郎の言葉に嘘偽りは無かった。
その言の葉だけで、九郎のひととなりは 理解できたのだ。


「なっ!? 武士に向かって綺麗などと…!」
「ははは。誤解を与えたね。綺麗だと言ったのは キミの心根さ」
「む…う」


九郎の心の潔さは 近くにいる弁慶が もっとも痛感している。
戦を終わらせようと。

策を講じ、多少の犠牲にも目を瞑り…
それでも、彼の行く道を薙ぎ払って…

そうして、出来た道を九郎が ついて来てくれる…



――「キミがもう少し 疑り深い人だったら いいかもしれませんけど…僕もずいぶんと 性格が悪くなったな という話です^^」――



本気か冗談か…

九郎の心が 綺麗になるのに比例して 弁慶の心は 白と黒をひっくり返す オセロのようだ。

               ★

同じ四神の八葉…だからでは ないだろう。
ダリウスは 九郎を ことのほか 気に入った。


「さあさあ^^ 食べておくれ」


気に入った相手には(作るのが)大好きな 手料理を振舞うのだ♪

味は・・・・・置いておく(笑)


「そう言えば 腹が減ったな。頂こう」


見た目は・・・なんと言う事でしょう。
大よその期待を裏切り、どどめ色ではありません。

だが・・・・・


「凄いな。赤に青。黄色、緑、紫…橙と これは藍色か」


食べ物では まずお見かけしない、皿の中で自ら 虹の七色を 発する 神々しくも禍々しい、何が何だか 理解不能の一品が そこにあった!!

九郎はどうするのか…


「パクっ!」


躊躇いもせず 食べたーーー!!


「むむっ!」


九郎の顔が歪む…
それはそうだろう(哀)

が!



「パクパク パクっ!!」


皿の中身が 勢い良く消えてゆく!!
九郎の腹の中に!!!!!

そうして…
…お皿の中は空っぽに。



「(ドキドキ)どうだったかな(ワクワク)」


自分の料理を あっという間に 平らげてくれた。

いつもは 自分の料理を食べた相手は 引き攣った表情、そののち気絶。
ひょっとして…料理の腕が上がった…?

羨望の眼差しで 九郎の言葉を待った。



「・・・・・。不味かったぞ!!」



九郎は嘘も お世辞も 吐けない!
キッパリ ハッキリと 料理の味は不味かったと。
正直に言い放つのだ!



「・・・・・。では…何故 全部 食べてくれたんだい…?」
「当然だ。食べ物を粗末にしては罰が当たる。戦場では 食べられるだけ ありがたいのだ」
「そ…そうか…俺は…食べ物を 軽んじていたのかもしれない…」


一族の中にも 差別を受け 飢えに苦しんできた 過去を持つ者もいる。
ダリウスが 自分の非を認め 潔く反省すると…



――……パアーーー!!!



「キミに 俺の手料理を振舞うのは もう少し 腕を上げてからにしようかな」
(…戦場で あいつが作った飯よりは マシだったな…)


――…奇跡の逢瀬…八葉は試練を乗り越え、自分達の時代へと戻っていった…――


前へ|次へ

コメントを書く
日記を書き直す
この日記を削除

[戻る]



©フォレストページ