短編集[小説]
□三代目の想い
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「フ、フハハハハッ!!!」
第六天魔王、織田信長の高笑いが金ケ崎に木霊する。
その足元には、彼が黄泉より復活するための贄となった妹が、無造作に横たわらせられていた。
「信長公………信長公……!!あはは、はははは!!!」
ふらふらと信長に近付く僧侶、天海の後頭部を、三代目雑賀孫市は撃った。
ばぁんと響く銃声。
「…………我らは、私は、こんなことを認めない…!」
歓喜の表情のまま、天海はぐらりと横に倒れた。その瞳は息絶えて尚、信長を見つめていた。
「…………魔王が、その妹が、僧侶が…………!」
魔王の妹にでさえも動揺してしまったのに、それ以上の刺激が孫市を襲う。
死んだ筈の第六天魔王は、行方不明となっていた妹の血により復活。小早川軍の僧侶は、魔王と一緒に死んだ筈の明智光秀。
恐怖が、怒りが、冷静でなければならない彼女を揺さぶる。
「死んで、しまう………みんなみんなみんなしんで…………!」
頭を抱え、うずくまる。
怖い怖い怖い怖い。
命が散る命が消える命が失われる。
私の目の前で私の見えないところで私の目が隠されるように。
過呼吸になる胸を押さえた孫市の目には、本能寺跡へと消える魔王の姿は映っていない。
代わりに見えていたのは、幾年前の光景だった。