Short story

□おいかけっこ
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私には、ずっと好きな人がいる。



年が5つも離れた、お兄ちゃんみたいな人。









「おはよっ!」


『おはよー友梨奈』





こうして毎朝一緒に学校に行くのが日課だった。



もちろん、年が離れているから向かう先は違うわけで、







『んじゃ、また帰りな』


「うん、待ってるねっ」





駅前で高校に向かう彼と別れて、


私は中学校に向かう。














『お待たせ、』


「もう…遅いよ」


『ごめんな、補講が長引いた』


「むう…」







私はまだ中学生だけど、彼はもう大学受験を控えた受験生。


教えてはくれないけど、彼にも夢があって。


邪魔になるかな、と思ってこの気持ちは未だに伝えられずにいた。





こんな年上を好きになってしまうのもどうかと思ったけど、


ずっと前から好きだった。


小学生が高校生を好きになるなんて、誰にも言えるわけないし。









『なあ友梨奈ー』


「んー?」


『お前さ、友達いねぇの?』


「えぇ!?」


『いや、普通さ、友達と帰るもんだろ?』





何を言い出すかと思えば…



そりゃあ友達いないわけじゃないけど、一緒に帰るなんて考えたことなかった。


ずっとこうして2人で登下校するのが当たり前だと思ってたし。




むしろ一緒にいたいし…








「ていうか、お兄こそ友達と帰ればいいじゃん」


『あの駅で降りるやつがいないんだよ』


「ふぅ〜ん」


『まぁ別に、友梨奈がいるからいいよ』




そう言って彼は足早に歩いて行った。








あーあ、そんなこと言われたらちょっと期待しちゃうよね。




素直に好きって言えたらいいのにな…










そう思いながら、昔より大きくなった彼の背中を、追いかける。
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