銀魂

□恋日記 六日目
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(沖田目線)

姉上の葬式から数日経っても俺はまだ悲しみから抜け出せることはできなかった。
本当は動く気力すらないのだけれど、屯所の俺を気遣う空気が嫌で外へ出た。
犬も歩けば棒に当たるというが幸か不幸か俺はチャイナと出くわした。
俺の顔はそんなに酷いのかと思わせるくらいにチャイナは眉を寄せる。
「ちょっと付いて来るヨロシ」
チャイナはおもむろに俺の手を掴んだと思うとどこかへ歩きだした。

「ここのホテルで真選組と万事屋が初めて会ったネ」

「この公園でみんなで花見したアル。初めてお前と戦ってお前と私はライバルになったネ」

「ここの祭りで射的対決したアルナ。結局決着は付かなかったけど楽しかったアル」
「そういえばここでお前の休日の時に会って胸クソ悪い地下闘技場に連れて行かれたこともあったナ」

「銀ちゃんが記憶喪失になった時、私らは銀ちゃんを助ける為、お前らは工場潰すのとゴリを助ける為にこの工場で一緒に戦ったネ」

「定春が大きくなっちゃった時、お前定春をバズーカで撃とうとしたネ。あれは今でもちょっと怒ってるアルヨ」

「向こうの山でカブトムシ狩りして勝負したナ。結局銀ちゃんに邪魔されちゃったけど、また夏がきたら勝負するヨロシ」

「九ちゃんの家では姉御奪還の為に一緒に戦ったアルナ。あの時、お前にはたくさん助けて貰ったアル。あの時は言えなかったけどありがとうネ」

色んなところへ俺を連れ回し真選組屯所に帰ってきた頃にはもう日は暮れていた。
「そしてここが最後の場所アル」
「最後の場所って…屯所に戻ってきただけじゃねぇか」
「でも、ここもお前と私の思い出の
場所アルネ」
そう言って俺の部屋を目指し屯所内に入る。
「お化け騒動もあったし、お前が私に告白してきたのもここアルナ」
チャイナが思い出話をしている間に部屋に着く。
俺は部屋の真ん中に座らせられ、チャイナ自身も隣に座った。
部屋の襖は開けっ放しなので空の月が良く見えた。
「お前の姉ちゃんの話、銀ちゃんから聞いたアル」
それはチャイナが何も聞いてこないことでなんとなく分かっていた。
今日の行動もそれ故だということも勘付いてはいた。
「お前は私と似てるアル。私にはパピーと兄ちゃんがいるけれど、バラバラだったから………私はお前の気持ち分かるアル」
脈絡のない会話はどこへ辿り着くのか俺は黙って見守る。
「私も一人だと思ってたネ。けどそれは違ったアル。パピーに銀ちゃん、新八、姉御、それに…お前がいたアル。
お前にもきっと思い出を共有して笑ったり泣けたりできる仲間がいるはずネ。まぁ、お前は少ないだろけどナ」
神楽の拙い言葉で思い浮かんだのは近藤さんや土方、山崎、他真選組の面々と目の前にいる神楽の顔だった。
「そうですねィ。少なくともてめーがいるや」
いつものように軽い口調に戻れば神楽の顔も晴れる。
床に置いていた俺の手に神楽の手が重なる。
「お前の悲しみは私に分けるとヨロシ。これからも何かあったらそうすると良いヨ」
「まるでこれからも一緒に居てくれるみてーな言い方じゃねぇか」
「その通りアル」
「じゃあそんな遠回しな言い方じゃなくてストレートに言ってくだせェ」
そう言えば神楽は顔を真っ赤にしてアタフタし始める。
「ちゃんと名前も呼んでくれんでさァ」
神楽はしばらく口をパクパクさせていたが観念したようで。
「総悟……好きアルヨ」
目線を逸らしながら言ってくれた。
「ありがとな」
俺は重ねられてた手と手を指が絡むように握り直す。
神楽はべつにそれに反抗するわけでもなく、ただただ顔を赤らめてる。
しばらくして落ち着いてきたのか
神楽が口を開く。
「総悟、まだ悲しいアルか?」
「簡単には消えてくれそうにねぇや」
「総悟、寂しいアルか?」
「俺の周りにはうるさいやつが多いからな」
「総悟、幸せアルか?」
「誰かさんがこれからは隣に居てくれるらしいからな」
そう言って俺らは笑いあった。

ーー帰りの遅い神楽を迎えに旦那が怒鳴り込みに来る5秒前

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