笠松先輩と .
□笠松先輩と居場所
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忘れ物を取りに教室へ戻ると
自分の席にうつ伏せになって寝ている小枝がいた。
他の奴らはもう下校していて
教室には俺と小枝だけだった。
俺は起こさないように、と
静かに教室に入り忘れたノートを探す。
すると、小枝は ん‥っ、と、起き上がって、こちらを見る。
「すまん、起こしたか。」
俺はそう謝ると見つけたノートを持って帰ろうとする。
そんな俺の姿を虚ろな目をして見ていた小枝は
カタンと椅子で音を立て立ち上がり
綺麗な髪を揺らしてこちらへ近づいてくる。
そして腕をまくった。
「引きます?」
そんな問いかけをする小枝の声は
か細く、だが怯えているようなものではなく
どちらかというと芯の通った綺麗な声だった。
だがしかし
そんな傷を見せられ
そんな彼女に魅せられ
言葉を発せれるほど余裕のある俺じゃない。
そんな俺を見た小枝は
いいの、と小さく呟き
袖を直しながら
「バスケ部のキャプテンから見てこういうの、どうなのかと思っただけだから。」
と、笑った。
とても鮮やかに笑った。
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