ハンター試験編

□8話:ホテルの小部屋
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3次試験が終わり、ハンター試験受験者達は再び協会の飛行船に乗り込み次の試験会場へと向かっていた。


眼下には青い海が広がっている。


海といっても一面が海という状態ではなく、ところどころに島や岩が浮かんでいる。


飛行船が陸に足をつけたのは、そんな島々の中のひとつであり、岸壁や森林を持ち合わせた広めの小島。


しかし、受験生達は首を傾げていた。


その島々の周りにはたくさんの難破船や、ちぎれたなんらかの残骸が海の表面を飾っていたからだ。
 

ここが次の試験会場か?そう思った。

 
37人の受験者を迎えたのは、二人の老夫婦。


バナー(婆)とジナー(爺)と名乗った老夫婦の後ろには軍艦を改装した大きなホテルがあり「3日後から4次試験を行うのでそれまで休んでください」と告げられる。


この島には試験ではなく、休息時間であったと安堵する受験者達。
 

やれやれと列を成してホテルに入り込もうとするが、ストップがかけられる。


宿泊費は1000万ジェニーだと老夫婦は言ったのだ。


法外すぎる価格に払うことができず、不満の声があがる。


それに対し、老夫婦は交換条件を出した。


「別の支払いを提案しております。それは現物です。各自、難破船を詮索し、お宝を持ってきてください。お宝と交換で宿泊費とさせていただきます」


との事。


振り返ればたくさんの難破船がある。


受験者達はその内容を聞き、休息だと安心した気持ちからやはり試験の一環なのか?と再び疑問をもち宝探しを始めるのだった。


受験者達は各自、海に潜り宝を探し出す。


沈んだ船の中や、岩にのぼり割れた船内にはたくさんの金銀財宝。


ジュラ3世の往還や、イング女王に献上予定だった太陽の錫状など。


ゴンとキルアは海の中を遊ぶように、宝を求めて潜っていた。


リリー、クラピカ、レオリオはそれぞれ難破船の中を探していた。


『もー何が休息よっ。これじゃあハンター試験と変わらないじゃない!』


…ちょっと待って。


これもハンター試験の一環なのかな?


宝探しはハンターの基本中の基本だしね。


でもあのおじいさんとおばあさん、毎年ハンター試験を利用してたくさん設けてるんだろうなー。


それにしたって1000万ジェニーは高すぎでしょっ!!


早くシャワーで汗流して、ゆっくり寝たいよー!!


と、心の中では吠えたてながら、しかし表面上は大人しく、リリーは難破船の中に入り宝探しを続ける。


すると…


あ!


穴の空いた床から宝箱らしき物を見つけたリリー。


どうやらこの難破船には一階もあるようだ。


しかし、梯子が無ければ勇気がないと降りられない高さ。


下に降りる梯子や階段を探しても見つからず、リリーは見つけた縄を柱に括り付け、その空いた穴から降りることにしたのだが…


突然、リリーが立っていた床がすさまじい音をたてて抜け落ち、リリーは下の階に落ちてしまった。


バッシャーン!!


『いったぁ…て、うそ!!びしょびしょ!?』


リリーが落ちた一階はほぼ沈没しており、リリーは全身濡れてしまった。


ま、まさかリュックも!?


リリーは後ろのリュックが濡れていないか確認するが…


見事に全部濡れている。


どうしよう…着替えがない。


しかも海水だから塩臭いし。


はぁ、本当についてないなぁ…(泣)


でも宝箱はゲット。


見つけた豪華な宝箱は、金とワインレッドに宝石のような物がついている。


30センチ程の大きさで、これは中身も期待して良さそうだ。


まずは上に登って中身を確認しないと。


早くホテルでシャワーを浴びてゆっくりしたい!!


…………


でも、どうやって登ろう?


辺りを確認するが、2階に上がる階段も梯子もなく、空いた天井にジャンプして登るのも不可能な高さだ。


誰かに助けを求めるしかなさそう…


ずっと発見されずに、ここで寝泊まり?


そんなの絶対に嫌だ〜!!


『誰かー!!お願い!!助けてーっ!!』


リリーは、懸命に大声を出して助けを求める。


しかし幾ら叫んでも誰も助けに来ない。


そして30分後。


『お願い…誰かぁ〜、誰かたすけてーっ!』


リリーは半泣き状態で声を出す。


すると誰かが船に入ってくる足音がした。


「…リリー、居るのか?」


こ、この声は…!


『クラピカ!!ここよ、ここ!!』


上を見上げて呼ぶと、空いた天井からクラピカが顔を覗かせた。


助けに来てくれたのが、大好きなクラピカでよかったと内心大喜びのリリー。


『ほんとに良かったぁ。クラピカ、助けてぇ!!』


「落ちたのか!!大丈夫か!?」


『うん、大丈夫!ただ登れなくて…』


クラピカは登れる方法がないか、辺りを確認する。


すると柱にくくりつけられたロープを発見し、それを更に固く縛ると、そのロープを床の穴に落とした。


「このロープに捕まれ!私が引き上げる」


『うん!あ、待って!』


リリーは慌てて見つけた宝箱を手に取る。


『これ投げるから受け取って!』


「あぁ、分かった」


リリーは手に持っていた宝箱を穴の空いた天井へと投げた。


見事に受け取るクラピカ。


リリーは吊るされた目の前のロープに掴まった。


『いいよ!』


「よし」


クラピカは合図と同時にロープを思いきり引っ張る。


…う、重い。


クラピカは力を振り絞って、引っ張り続ける。


リリーはどんどん2階へと上っていく。


穴の空いた床へと近づき、リリーはその床に掴まる。


そして、クラピカがリリーの体を掴んで引きずりあげる。


リリーはそのまま体重に任せてクラピカの上に倒れ込んだ。


良かったぁ〜!!


助かったー!!(泣)


………


リリーは、はっとした。


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