ハンター試験編

□11話:ゼビル島
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飛行船に乗った25人の受験生達は、飛行船で2日間の休息を取っていた。


嬉しそうに廊下を走るリリー。


リリーはクラピカに会いたくて、彼を探していた。


『あ、いた!!』


リリーは目を輝かせる。


クラピカとレオリオが、ロビーで丸いテーブルがある椅子に向かい合って座り、飲み物を飲んでいた。


『クラピカ!レオリオ!』


元気よく声に出して、二人を呼ぶリリー。


クラピカがリリーの方へ向いた時、リリーは大きく目を見開いた。


クラピカの頭に、何やら包帯が巻かれている。


『ククククラピカ!!どうしたのこれ!?』


慌てて尋ねるリリーに、クラピカは相変わらずクールに答えた。


「あぁ、これか。どうやら船が傾いた時に転んで頭を打ったらしくてな。だが軽い怪我だ。問題ない」


『ほんとに大丈夫なの!?ちゃんと手当した??』


「あぁ。先程レオリオにも診てもらった」


『もう無理しないでねっ。痛くない??』


クラピカをとても心配するリリーに、レオリオが面白くないと言った表情で話しかけた。


「おいリリー!クラピカばかり心配してるが、オレも大変だったんだぜ!?」


『あ。レオリオ!ゴメンね!!大丈夫?』


「ったく、オレ様はついでか!?まぁ見ての通り、何もねーぜ?」


『もうレオリオも心配してたんだからね!ゴンと助けに行ったんだから』


二人の会話を耳にしながら、クラピカはコーヒーを口にする。


「おお、そうらしいな!ありがとな!あ、そういえばリリー!お前こそ大丈夫なのか!?」


『ん、なにが??』


「オメェ、ゴンを助けたときに波にさらわれて、手すりに引っかかったんだろ!?よく無事だったな!!」


その話に初耳だったクラピカは、飲んでいた手を止めて、リリーを見て口を開く。


「波にさらわれた?」


『うん。でもなんで助かったのか、不思議なんだけど…なんでかな』


まるで他人ごとのような口ぶりのリリー。


それに怒りを感じたクラピカは、コーヒーをテーブルへ乱暴に起き、語調を荒げた。


「全くお前はっ。何故いつもそんなに無茶をする!波にさらわれただと?もし手すりに引っかからなければ、お前は海で死んでたんだぞ!?」


クラピカの怒鳴り声に、周りにいた受験生達が彼を見る。


突然クラピカに叱られて、リリーの頭は一瞬真っ白になった。


何度もまばたきをして、困った表情を浮かべているリリーは口を開く。


『だ、だって…仲間を、放っておけなかったの…それにわたしだって、何かの役に立ちたかったの!』


クラピカに怯えながらも、真っ直ぐな目で必死に言うリリーに、クラピカは黙る。


「おいおい、どうしたんだ?せっかく生き残ったのに喧嘩か?」


すると、後ろから男の人の声がして、近づいて来る。


自分の隣に来た背の高い人物に、リリーは顔を上げた。


あ…この人は確か…


『ハゲゾーさん?』


ドテーッ


その場にいた受験生達が転がる。


起き上がったハンゾーが、やれやれと言った顔で口を開いた。


「ったく、このオレ様の名前をちゃんと覚えてない奴がいたとは…しかもハゲゾーか!?」


『あ、間違えました!!ハンゾーさんでしたよねっ!?すみません!!』


慌てて訂正し、必死に謝るリリー。


隣ではレオリオが声に出して笑い、リリーの肩を叩く。


「リリー!!お前の天然はホント最高だな!!ハゲゾーか!確かに、ハゲ…」


レオリオが言い終わる前に、ハンゾーがレオリオをボカッとグーで殴る。


「また海の中に沈むか?」


「いってェな!何も殴ることねーだろ!?」


「オレの頭ははげてるんじゃなく、あえてこうしてるんだ。このオレ様の甘いマスクに似合う最高の…」


「だぁ!!何言ってやがるっ!!テメェはどう見てもつるっぱげ…」


またもや二回目のパンチを食らわすハンゾー。


二人の喧嘩が始まる。


「二人とも!静かにしないか!!」


「オメェが言うのかそれを!!」


レオリオはクラピカに言い放ち、ハンゾーに目を向ける。


クラピカはため息をつくと、再びコーヒーを飲み始めた。


こうなれば、落ち着くまで二人を放って置くしかないだろう。


リリーは、二人の喧嘩を前に茫然と立ち尽くす。


長い喧嘩に飽きてきた頃。


…なんか喉が乾いたなー。


そういえば、今朝から何も飲んでなかった。


わたしも何か飲み物飲もうっと!


リリーは飲み物を買いに出掛けた。


ついでにトイレにも向かう。


しばらくしてから戻って来ると、喧嘩は収まり、今度はハンゾーも含めてテーブルを真ん中に円になって3人で話していた。


リリーも輪に入ろうと、ハンゾーとレオリオの間の空いている椅子に座った。


目の前にはクラピカがいる。


「ーーにしても、無事に脱出できて、今はこうして優雅に飛行船の中とは、生き残った甲斐があったってもんだな」


ハンゾーがペラペラと楽しそうに話している。


クラピカとレオリオは、若干疲れてるのか、ただ話すのがめんどくさいのか、余り話しを聞いていない様子だ。


「そういえば、皆はどこの国の出身なんだ?オレの国は日本っていう国でな、観光スポットがそれはもう数えきれないほどあってな。―――‥」


ペラペラ。と、ハンゾーの日本を語る話は、10分以上も続いた。


ハンゾーの余りのおしゃべりに、リリーは、ポカーンと口を開けている。


そんなリリーを見たクラピカは、ふっと笑った。


「ーーーで、ここで本題なんだが、リリーだったな。全部試験が終わったら、オレと一緒に日本に行くってーのはどうだ?」


目を輝かせて言うハンゾー。


ぶっ…


あまりにも突然な話に、リリーは飲んでいたジュースを吹きだしそうになった。


な、なに言ってるのこの人?


気は確か!?


リリーは苦笑いを浮かべて、やんわりと断る。


『あの…わたしは結構です』


そう言って、鞄からハンカチを取り出し、少しこぼれた場所を慌てて拭く。


そしてリリーは、ゴクゴクとジュースを飲む。


「まぁそんな遠慮すんな!君のような綺麗な子は、日本に来たら、ハンターよりもいくらでもいい仕事はあるし、なんなら君も忍者に…」


「馬鹿野郎!!リリーが忍者なんて勿体ねーだろ!?リリーこそモデルか、それこそグラビアに…」


グ、グラビア!?


ぶっ!!


リリーは飲んでいたジュースを吹きだした。


『もうっ、何言ってんのよ!!モデルはともかくグラビア!?レオリオの変態!!』


そう怒りながらも、リリーはちらちらとクラピカの顔色を伺う。


クラピカはというと、目を伏せてテーブルを見つめて固まっていた。


「ったく、本気にしたのか!?冗談だよ、冗談!!オレから見ればリリーはまだまだおこちゃまだし、色気もまだまだだからなァ」


そう言って、ぽんぽんとリリーの頭に手を乗せるレオリオ。


ムカ。


「それを女子に言う台詞?レオリオって前から思ってたけど、なんか親父臭いし、ほんとに10代なの??」


グサッ


「おい!親父臭いって言うな!自分でも気にしてんだからよー!!」


やけになって言うレオリオ。


気にしてたんだ…と、リリーは再び苦笑い。


すると、ハンゾーが話を切り替える。


「そんな話はどうでもいい。なぁリリー。観光がてら日本に遊びに来るのも考えてみてくれねーか?」


『いや、でも。ハンター試験が終わったら、師匠の所に行きたくて、そのあとでもよければ…』


「本当か!?じゃあさっそく連絡先を…!」


「リリーは、確か携帯を持ってなかったよな」


そう言って、リリーの目を真っ直ぐ見て言うクラピカ。


携帯は持ってるけど…


クラピカの目は、持ってないと言え。と言った目をしている。


『あの…携帯、持ってなくて…あははは』


笑って誤魔化すリリー。


「そうなのか!?まぁ携帯がなくても、手紙という手段もある!」


「…リリーは、誰彼構わず仲良くするのが特技だからな」


『え…』


リリーは、ふとクラピカを見る。


何かハンゾーに突っかかった言い方をするクラピカ。


もしかして…と思いながらも、そんな訳ないっと、リリーは首を振る。


「おい、リリー。じっとしろ、顔に何かついてるぜ?」


そう言ってハンゾーが、リリーの頬に触れる。


顔を近付けて、彼女の顔を覗き込む。


リリーの目の下についたまつ毛を指で優しく取るハンゾー。


「まつげか。ほら、取れたぜ」


ハンゾーは、指先に乗せたまつ毛をリリーに見せて、ふうっと吹いた。


『あ…ありがとうございます。ハンゾーさん』


そんな二人を見て、なぜか怒りが増すクラピカ。


「ハンゾーさんなんて水くさい。ハンゾーって呼んでくれ!改めてよろしくなっ!!」


そう言って、がしっとリリーの手を両手で握って言ったハンゾー。


リリーの手に、馴れ馴れしく男の人の手が触れている。


ぶちっ。


クラピカの中で、何かが切れる。


バシッ


クラピカは、いきなりハンゾーの頭を強く叩いた。


「あ……」


思わず手が出てしまったクラピカ。


ハンゾーは目を丸くして、固まっている。


リリーとレオリオも目を丸くして、クラピカを見た。


クラピカは、苦笑いを浮かべて言った。


「すまないハンゾー。頭に虫がいたんだ。飛行船なのに可笑しいな…」


ふうっと手のひらをわざとらしく吹くクラピカ。


「クラピカ!そんなに強く叩くことねーだろう?」


「ははは……。用事を見つけた。私はこれで」


そうクールに言い残し、クラピカは立ち上がり、その場を後にした。


去っていく彼を見ながら、レオリオがニヤッと笑う。


「かわいいな」


『え、かわいい?』


クラピカが、かわいい??


レオリオ、もしかして…あっち系!?


「…なにがなんだか分かってないお前もかわいいな」


『は??』


レオリオの発言に、ますます混乱するリリー。


レオリオは、笑みを浮かべたまま、やれやれと言った顔で息を吐いた。


二人には、もう少し時間がかかりそうだな。


「リリー」


ハンゾーに呼ばれて、振り向くリリー。


「リリー、正直オレのことどう思う?オレはルックスもいいし、爽やかで――」


「おい」


「実力も抜きんでてるときてる!」


「おいちょっと」


「これで正式にハンターになれば、もうモテモテで困るだろうなぁ!あははは!だから、そうなる前に、オレとぜひ一緒に……て、あれ?リリーは?」


座っていた椅子に彼女がいない。


我に返ったハンゾーがいなくなったリリーを探す。


レオリオは、親指を立てて後ろを指しながら、呆れて言った。


「リリーなら、もう行っちまったぜ?」


「はあぁ!!?」




















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