ハンター試験編
□6話:多数決の道
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「リリー駄目だ!!」
強く腕を捕まれ、リリーは振り返る。
腕を掴んで声を上げたのは、クラピカだった。
レオリオも詰め寄って、語調を荒くする。
「おいリリー!!オメェは女だぜ!?女一人であんなヤツと戦ったら死ぬぞ!?」
「そうだ!リリーは最後にしろ!!私達が先に3勝すればリリーに順番は回らない」
リリーは首を竦めて、クラピカとレオリオを上目遣いに見上げた。
『…確かに心配する気持ちは分かるよ。でも、女だからって特別扱いされたくない!それに、こんな時の為に師匠に鍛えられてきたから…自分を試したいの!!』
それを聞いたキルアは、冷たい目をして言い放つ。
「だからって、お前にアイツは倒せねーよ」
『…………』
リリーの目が大きく揺れた。
ぐっと唇を噛んでうつむくと、リリーはクラピカの手を無理矢理振りほどき、黙って闘技場に進み出した。
頭に血が上っているクラピカは、更に激しく怒鳴る。
「リリー!戻るんだ!!」
だが、リリーは振り返らず、クラピカの言葉を無視して闘技場に辿り着く。
男は狂気の宿った目をして笑った。
「勝負の方法を決めようか。オレはデスマッチを提案する!!一方が負けを認めるかまたは死ぬかするまで戦う!!」
リリーの顔に、明らかな動揺の色が浮かんだ。
硬く拳を握りしめ、リリーは覚悟を決めて答えた。
『…分かった!行くよ…!!』
男は猛スピードでリリーに目掛けて走ってくる。
クラピカ達は必死に目を凝らしてリリーを見守った。
リリーは突進してくる男の攻撃を避けて、男の顔に目掛けて右足で力強く蹴りをかわす。
「…女のくせになかなかやるな」
男は次から次へとリリーに攻撃をする。
リリーは腕でその攻撃を防御し、敵が一瞬隙をみせた時、再び蹴りをかわす。
すると、男はリリーの右足を掴むとリリーの首を掴み、上に持ち上げた。
『…ぐぁ…っ!』
声にならない喘鳴(ぜんめい)が、リリーの唇からこぼれ落ちる。
リリーは必死に敵の片手を両手で振りほどこうとするが、力が入らない。
息が…苦しい…!!
ドクン、と。
クラピカの心臓が跳ね上がる。
「…どうだ、苦しいか?なんならこのまま息の根を止めてやるぞ」
その言葉にリリーはこれ以上ないほど大きく、目を見開いた。
そして…
リリーの目が、一瞬緋色に染まる。
「……………まさか…あれは…!」
緋の眼…?
立ちすくんだまま、クラピカはリリーを見つめた。
足が、動かない。
苦しんでいるリリーの傍に、駆けつけたいのに。
その名を呼んで、助けてやらなければと、思うのに。
見てもいられなくなったレオリオとゴンが、リリーに激しく声を上げた。
「リリー!!早く参ったと言っちまえ!!」
「リリー!!」
キルアは狂気の目で敵を見つめ、手を変形させる。
リリーは、血の気の失せた顔で必死に声を振り絞った。
『…ま…い…っ…た…!』
その言葉を聞いた男は、薄く笑うとそのまま手を離す。
リリーは地面に崩れ落ちた。
みんな…
ごめんなさい。
わたし、勝てなかった。
何も出来なかった。
師匠…
ごめんね。
自分の力がこんなにも弱かったなんて気づかなかったよ。
師匠の弟子として、情けない…
ゲホゲホと激しい咳をして、肩を上下にしながら息を吸うと、リリーはクラピカを目だけで探した。
だが、視界が段々と狭くなる。
「リリー!!」
クラピカの、声だ。
優しくて、力強い響き。
わたしの、大好きな、声。
『…ク…ラ…ピ…カ………』
リリーはクラピカの名前を呼ぶと、静かに気を失った―――…
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