ハンター試験編

□6話:多数決の道
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クラピカは、暗い闇の中にいた。


ひどく寒い、どこまでも広がる闇。


ここにいるのは、私だけだ。


他には誰もいない。


一人でいるのは、慣れていた。


その時、後ろから声が聞こえた。


「…見つけた!クラピカ、探したよ」


とても懐かしい声。


クラピカは反射的に後ろに振り返ると、ソフィアがクラピカを見つめて笑っていた。


「なんでここにいるの?ここ、暗いし、寂しいし…早く、帰ろう」


「…どこに」


硬い声で呟くクラピカに、ソフィアは目を丸くした。


「クラピカの家だよ。決まってるじゃん」


私の…家?


もう私の家は残っていない。


家族もいない。


友達もいない。


ソフィアもいない。


幻影旅団に全て奪われて。


ソフィアが目の前にいるのは…幻だ。


もうこれ以上、大事な人を失いたくない。


だから、ひとりでいるのが一番いいのだ。


するとソフィアは、少し呆れた目をして苦笑した。


「もう何言ってるの?…わたしはクラピカの傍にいるよ。近くにいる。だから、帰ろうよ。一緒に…」


ソフィアは優しく微笑んだ―――…










朝日が顔を出した頃、クラピカはゆっくりと目を開けた。


右肩に何かがのしかかっていて、重たい。


視線を向けると、隣にはリリーが自分の右肩に頭を乗せて眠っていた。


そして、自分に毛布がかけられていることに気づき、いったいいつから隣にいたのか。


全く気がつかなかった自分に少し驚いた。


気持ち良さそうに眠っているリリーの顔に、5年前に見たソフィアの、無邪気な瞳が重なる。


クラピカは恐る恐る毛布に隠れたリリーの手を優しく握って、再び目を閉じた―――…






「皆様、大変お待たせいたしました。目的地に到着です」


アナウンスが流れると同時に受験生達は窓の外を見た。


それは、高くて大きなタワー。


受験生達が降りる準備をする中、リリーは未だ熟睡していた。


「おい、リリー!!置いてくぜ?そろそろ起きろ!!」


何度も肩を揺さぶるレオリオに、リリーはのろのろとやっと目を覚ました。


『うぅ〜ん…眠い…。あと1分だけ…』


眉にシワを寄せ、再び目を閉じ始めたリリーに、今度はクラピカが眉を寄せて激しい口調で起こした。


「おいリリー!お前は試験に受かる気があるのか?早く起きろ!!」


『…クラピカァ…?』


すっごく眠たい…。


体が重いし、全然疲れが取れた気がしないよぉ…


低血圧で朝が弱いリリーはやっと目を覚まし、ふらふらと立ち上がると、顔を洗いに化粧室に向かった。


飛行船はタワーの頂上に到着すると、扉からぞろぞろと受験生達が降り始める。


そこは、何もなく、誰もいない静かな場所。


いったい何が始まるのかと、受験生達はそわそわ周りを見渡した。


すると、一人のハンター協会員が説明し始める。


「ここは、トリックタワーと呼ばれる塔のてっぺんです。ここが三次試験のスタート地点になります。さて、試験内容ですが…試験官の伝言です。

生きて下まで降りてくること。制限時間は72時間。
それではスタート!!」


合図が出ると受験生達は下に降りる方法を模索した。


一人の受験生はタワーの外壁をつたって降りていくが怪鳥の餌食となった。


リリー達は隠し扉を探しながら地面に違和感がある所を手分けて探す。


カコン…


『…ん?』


もしかして、これかな??


『ねぇ!みんな!!あったよー!!』


最初に地面に違和感を感じたリリーは皆を大声で呼んだ。


その場所には、5つの隠し扉がある。


ちょうど5人だったので、それぞれ扉の位置に着き、リリー達は隠し扉の穴の中に入っていった。


タワーの中に入ると、そこは出口がない部屋。


どうやら、ここからゴールまでの道のりは5人で多数決をして乗り越えなければならないルール。


5つ用意されたタイマーをリリー達は手首につけると、出口が現れた。


「このドアを開けるならマル、開けないならバツ」の多数決から始まり、リリー達は多数決をして道を進んでいった。


しばらく進んでいくとリリー達が辿り着いたのは…


闘技場だった。


だが、その闘技場の周りは深い奈落となっており、真っ暗で何も見えない。


一歩足を踏み外すと、死が待ち受けていることに違いないとリリーはぞっとした。


「…見ろよ」


キルアの言葉に4人は目を凝らして奥で並んでいる人物を見た。


5人の白装束に顔が隠され、全員手錠がかけられている。


すると、その一人が手錠を外され顔に被された布を脱ぐと、筋肉質で頭にいくつもの針で縫われた跡がある男性。


その男は、リリー達にルールの説明を始めた。


「勝負は一対一で行い、各自いちどだけしか戦えない!!順番は自由!!お前達が3勝以上すればここを通過することが出来る!!戦い方は自由!!片方が負けを認めれば残された片方を勝利者とする!!この勝負を受けるか否か採決されよ!!」


その説明を聞いたリリー達は、再び多数決で迷わずマルを押した。


薄く笑みを浮かべた男は、再び口を開く。


「よかろう、こちらの一番手はオレだ!!さぁ、そちらも選ばれよ!!」


緊張感が漂う中、誰が最初に行くのかと沈黙が続く。


…あの人、めっちゃ強そうだな。


でも、師匠に鍛えてもらった技を使えば戦える!!


わたし、強くなるって決めたんだ。


『みんな、私が行くね!!』


すると、音を出しながら闘技場への足場が現れ、リリーは足を闘技場へと進み始めた。


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