ハンター試験編

□3話:それぞれの理由
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私は急いでルクソ地方に向かった。









とてつもなく嫌な胸騒ぎがする。


心臓の音が耳まで聞こえ、手足が震える。


ニュースで流れていた事実が未だに信じられない。


いや、信じたくない。


私は懸命に走り続け、気が付けばルクソ地方に辿り着いていた。


村に向かう途中、一瞬鉄の臭いがした。


近づく度に心臓の音と寒気がより増してくる。


私は村に着き、立ち竦むと自分の見た光景に言葉を失った。


私が最後に見た村の面影が一つも残っていない。


沢山の家が焼かれ、死体が無惨に転がり、大量の血の臭いが鼻につき、時々吐き気に襲われる。


私は放心状態のまま村に足を踏み入れる。


父さん…母さん…


どこにいったんだ。


ソフィア…


ソフィア…


私はひたすら無数に転がる死体から家族、仲間、ソフィアを探した。


仲間の眼は無惨に抉り捕られ、家族は父だけが見つかった。


そして…


ソフィアと母はいくら探しても見つからない。


家と一緒に焼かれてしまったのか。


絶望の中、焼かれずにそのまま残された家を見つけ、私はその家のドアを開けた。


そこには…


向かい合わせに座らせて無数に刻まれたソフィアの両親の死体。


惨殺体の側には賊が残したメッセージ…


『我々は何ものも拒まない。だから我々から何も奪うな』


私の中から抑えきれない怒りが込み上げる。


それと同時に無数の涙が目から溢れだした。





我々が何をした…


ただ生きて、平凡に暮らしたかった。


ただ、それだけのことだ…


何故我々から何もかもを奪う?


私の夢はもう叶うことがない。


もう家族と食事をすることも…


友達と遊ぶことも…


そして…


ソフィアとの約束を守ることも。


あの幸せだった日々は、もう戻らない。


二度と、戻らないのだ。


クラピカは、我を忘れて声に出して泣き叫ぶ。


私が悪いのだ。


早く村に帰っていれば…


もっとソフィアの傍にいてあげれば…


ソフィア…


どうか…私を許してくれ…


クラピカは、しばらく拳を強く握ると、目を深い深い緋色に染めた。


許さない…


絶対に、奴らを許さない…!


必ず私が


奴らに復讐してやる……!!
















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