第2章
□学園祭
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学園祭当日
朝から家は忙しかった。
パパはいつも以上に気合いを入れ、ママは化粧をばっちり決め、クロロ兄は指揮者の練習で朝から出かけていた。
クラピカは私の分も入れたスーツを袋に詰め、私はみんなの女装を助ける為に化粧道具やヘアゴムなどを袋に詰めていた。
急いで朝ご飯を口に流し込み、クラピカと家を出た。
学校に着くと、女の子の大群が待ってましたと言わんばかりに近寄ってくる。
「クラピカ様ー!」
「リンくーん❤」
「学園祭頑張ってねぇー!」
『うんっありがとうー♪』
必殺爽やかスマイルを皆に撒き散らす。
「「「「キャーーーーッッ」」」」
女の子達が歓声を発しているうちに、無愛想なクラピカの手を引っ張り、門をくぐった。
自分達のクラスに入ると皆が黙々と作業していた。
クラスの内装は華やかに飾られていて、男女問わず入りやすい喫茶店に見える。
入口は小さなアーチを作り、カラフルなハート型の風船が天井にふよふよ浮いている。
客席にはレースの布が敷かれたテーブルに猫脚の椅子。
テーブルの上には一輪の花が飾られてある。
窓際はソファー席で、ゆったりと寛げるようになっている。
客席だけ見れば喫茶店らしい。
黒板には大きな字で『ようこそ!!コスプレ喫茶へ♪』と書かれてある。
午後になれば“コスプレ”の部分が“ホスト”になる。
クラスにデザイナーの息子がいたお蔭で、コスプレの用意もできた。
届けられたダンボールの中身を見ると吹き出しそうになったけど、吹き出すのはみんなが着替えてからにしよう。
開店時間1時間前になった頃、ようやくクラスの飾り付けが終わった。
ダンボールから自分達のコスプレを取り出し、空き部屋へ直行した。
セ「待ってたわよ〜♪」
空き部屋には保険医のセンリツちゃんがいた。
事前に、ヘアメイクをしてもらうよう頼んどいたのだ。
皆が着替えている間に私は部屋から抜け出し、トイレに駆け込み、衣装に着替える。
サラシを取り、ブラをつけ、ウィッグを取った。
栗色の長い髪が垂れる。
衣装に素早く着替え、鏡の前で髪を高い位置に結び、ポニーテールにした。
薄く化粧をし、準備が整ってからジャージを羽織り、空き部屋に戻った。
ガラッ
『俺は準備出来たよ〜』
「「「………誰?」」」
クラピカ、キルア、ゴン、レオリオ、ポックル以外が、声を揃えて言った。
ゴン「あっリンちゃ〜ん!お帰り!!」
ガバッ
ナース姿になったゴンが抱き着いてきた。
私に懐く姿は、まさに猫のようだ。
…………………。
「「「リンーーー!!??」」」
『えへ♪びっくりした?』
私は舌を出し、可愛く首を傾げた。
「誰かと思ったよ…」
「女にしか見えねぇー…」
「かなり可愛いんだけど……」
それぞれ思った事を口にする面々。
でも、リンからして皆の方が可愛いと感じていた。
女装メンバーは顔が女顔や可愛い系の人達が選ばれている。
いつもの5人はまぁ人気があるから選ばれた。
皆、コスプレに着替え、カツラを被っている。
リンもポニーテールをしている髪をカツラだと皆に言っておいた。
クラピカはメイド服。
キルアは白猫。
ゴンはナース。
レオリオはセーラー服。
ポックルは警察官。
いや……君達(レオリオ意外)、めちゃくちゃ似合ってるよ……。
ゴ「なんか下がスース―するね」
キ「まぁスカートだからな」
ゴ「キルア、白猫ピッタリだね!」
キ「やめろよ!早く脱ぎてーよ、こんな毛むくじゃらな衣装。ゴンの方こそ、メイド服ピッタリだぜ」
ゴ「そうかな?ありがとう、キルア!」
キ「ガクッ(汗)そこ喜ぶかフツー」
レ「なぁ!オレは似合ってるか!?」
ク「…キモイ」
レ「グサッ!!キモイとななんだ!キモイとはー!!?」
セ「もうみんな遊んでないで早く座って」
センリツちゃんは皆を鏡の前に座らせ、髪をいじりだした。
私もセンリツちゃんのお手伝いをした。
クラピカは毛先を内巻きにし、メイド用のカチューシャを。
キルアは髪をピンで止め、猫耳カチューシャをつけた。
ゴンはショートヘアーのカツラを被らせて、ナースキャップを被せ、ピンで止めた。
レオリオはロングのカツラを被らせた。
ポックルはロングのカツラを右下に結び、シュシュをつけた。
センリツちゃんは慣れた手つきで、皆に化粧をしていく。
セ「フフフフン♪」
センリツちゃんは余程気分が良いのか、鼻歌を歌いながらテキパキと手を動かしていく。
他の皆の髪型や化粧もやってあげ、教室へ戻った。
ガラッ
『たっだいまー♪』
シーーーーーーーーン……
あれ?皆硬直してる……。
もしかして皆、私だって気付いてない?
ハ「リンちゃんか!?」
ハンゾーが私に気付き、こっちに歩いてきた。
ハンゾーが声を発したと同時に、空気が張り詰めた……。
「「「「!!??」」」」
「って事は後ろにいるのがクラピカ達か……?」
「うわっ美少女集団にしか見えねー……」
「こりゃ儲かるなー♪」
「中にはキモイのもいるけど…」
皆が揃って感嘆の声をあげた。
ハ「リンちゃん…なんて可愛いんだッッ」
ハンゾーが抱き着こうとするのを、咄嗟に避けた。
ハ「避けることねーだろ!」
ハンゾーが口を尖らしていたが、リンは無視した。
女装メンバーの中で特に目を引くリン。
チアガールの衣装を着ているのだ。
赤と白ベースにシルバーとゴールドのライン。
胸には黄色とピンクで描かれた“CHEER”のロゴマーク。
脚にはルーズソックス。
コスプレにしては凝ったデザインになっている。
皆が注目しているのはそれだけじゃない。
栗色の艶やかな髪。
白雪の肌。
濁りの無い大きな黒い瞳。
長い睫毛。
紅色に染まる頬。
ぷっくりとした形の良い唇。
プリーツスコートから出る白く細長い脚……。
健全な男子なら、こんな美少女をほっておくわけがない。
なんせ、校内で“抱きたい男NO.1”なのだから。
「「「「ゴクッ……。」」」」
皆が凄い勢いでリンに近付く。
「「「リン!!!!」」」
『ほぇ?』
私は声がした方に振り向いた。
男はリンの肩に手を置き、鼻息を荒くした。
「あああのさ!!自由時間の時、俺と回らね!?」
男は顔を真っ赤にし、どもりながら喋った。
『うーーん……ごめ「リンは遊ぶ暇はないだろ」だそうです』
間髪いれずにクラピカがリンの言葉を遮った。
「わ……」
男はクラピカの姿を見て、またまた顔を赤く染めた。
クラピカは、まさにフランス人形のような美少女だったからである。
「「「すすすみませんでしたァッッ」」」
男達はすぐさま私達から離れ、教室から出ていった。
ク「全く、気をつけろ。お前は今、女の格好をしているんだからな」
いや……あなたもですよ……。
フランス人形のように美少女なの、気付いてないのね……。
キルアは白猫っぽくニャー♪と言って皆を笑わしていた。
そろそろ放送が流れる頃かな?
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