クールな彼に恋をした。

□アイツとの距離
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「体育祭楽しみだね」


「俺リレーやりたいんだよなー」


莉子とクラウスくんが、リビングで体育祭の話をしている。


あれからすぐに、クラウスくんもうちにやって来て、みんなで夕飯を食べることになった。


私はキッチンで、夕飯の準備。


クラピカは…


「……………」


う…(汗)


キッチンのダイニングテーブルに座り、いつも持ち歩いている本を読んでいた。


すぐ後ろに、クラピカがいる…


それだけで、包丁を持つ手が震えてしまう。


”うちで夕飯食べてかない? ”


とっさに出た言葉…


私が男子にあんなこと言うなんて、自分でも信じられない…


「お姉ちゃーん、何か手伝う?」


リビングにいる莉子が、私を呼ぶ。


『いいの?』


「うん!手伝うよー」


莉子が私の隣にやって来る。


『じゃあ、トマト切って』


「はーい」


莉子は私の隣で、手慣れた手つきでトマトを切り始めた。


「私も何か手伝える事あるか?」


「…俺も」


振り返ると、いつの間にかクラウスくんもクラピカの隣に座っていて、兄弟して同じことを言っていた。


『あーないから、ゆっくりしてて』


これはお礼なんだから、手伝わしちゃ意味なし。


「今日は親仕事なのか?」


クラウスくんが、家中を見渡して言った。


「うちの親、サロンのお店の経営者なの。離婚して慰謝料もらって、そのお金でお店開いたんだよ?(汗)子を持つ親として、ありえなくない?」


莉子が、呆れながら言った。


「だけど、そのサロンは大人気で…今じゃちょっとしたセレブだよ、あの人…(汗)第二の人生で、私達子どもを田舎にほったらかしにして、自分は東京のマンション借りて住んでるの。
ま、私達としては気楽だけどね〜小うるさい親がいない分、好き勝手出来るし、お小遣いは結構貰えるし♪」


…………。


莉子はケラケラと笑い、軽い口調でそう言った。


今、莉子が言ったことは全て事実。


好き勝手やっている母は、仕送りだけして、ほぼ東京に行ってしまっている。


子どもを置いて、母親は東京で働いている…なんて言えないので、周りには出張だと嘘をついていた。


ま、莉子の言う通り…親がいない方が楽なのは確か。


自由に生活できるしね…


「なーんだ。うちとあんまり変わんねぇじゃん」


少し安心したように言う、クラウスくん。


変わんないって…?


「俺んちも母子家庭で、お袋は地元の海外でファッションの仕事してるから家にいない。水上んちと一緒で、仕送りして貰って兄ちゃんと二人暮らしだよ」


そうだったの?


クラピカの家も…うちと同じ?


「お袋が海外に行き始めたのは最近で、さすがに心配だからって親戚が近くに住んでるこの街に引っ越してきたんだ」


そっか。


それで東京から、ちょっと田舎の方に引っ越してきたんだね…


クラウスくんの隣にいるクラピカを見ると、どうでもよさそうな顔をして頬杖をついて本を読んでいる。


「お袋も親父が死んでからしばらくは大変だったけど、一年経ってから仕事人間になった気がする。お前が言ったように、第二の人生ってやつ?自分のために楽しんで生きてるって感じ」


「わかるわかる!ま、お母さんの人生だから好きにすればいいよー」


「確かに〜」


ぶっ飛んだ母親を持つと、子どもは大人の考えになるんだな(汗)


妙に冷めてるっていうか…


『さ、ご飯だよ』


テーブルに作ったおかずを並べ、箸やグラスも用意する。


『莉子、味噌汁よそってくれる?』


「はいはーい」


私は、お茶碗にご飯を盛った。


急遽、クラピカ兄弟をうちに呼ぶことになったから…ご飯もう一回炊き直しなんだよね…。


きっと、男の子だからたくさん食べるだろうから…。


『クラピカ達は、ご飯の量はこれぐらいでいい?…………え?』


お茶碗に盛ったご飯の量を見てもらおうと、クラピカ達の方へ目をやると…


クラピカ兄弟は、テーブルに並べられたおかずを見て、何やら感動している様子。


『ど、どうしたの?』


「お兄ちゃん!これがちゃんとした飯なんだよな!?」


「そうだ、よく目に焼き付けろ」


は?


目に焼き付けろって…


「こんな美味そうな晩飯、初めて見た!」


「そうだな」


『え?』


美味そうって…


唐揚げとサラダときんぴらごぼうって感じで、普通だけど?


「お袋は料理全然ダメだったから、家庭料理で美味いやつとか食ったことない。お兄ちゃんはこっちに引っ越してきてから作り始めたけど、お袋よりは美味いよ」


ふーん…


お母さん、そんなに苦手なんだ。


けど、うちのお母さんだって上手な方じゃないしな…


本当、似た者親子だね。



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