ハンター試験編

□11話:ゼビル島
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舟がゼビル島に到着し、通過時間の早い受験生から順番に下船していく。


“一週間の間に6点分のプレートを集め、またこの場所に戻ってくること”


それが最後の説明だった。


次々に受験番号が呼ばれ、呼ばれた受験生は下船していく。


とうとう、リリーの番号が呼ばれた。


『クラピカ、レオリオ。先に行くね!』


「おう!気を付けろよ!絶対に生きて帰ってこいよ!!」


『レオリオもね!!』


「無事を祈る」


リリーは、瞬きもせずにクラピカを見つめた。


そして…


『クラピカもね!!』


リリーは精一杯の笑顔を作ると、背を向けてその場を走り始めた。







―――3時間後。


さっきまで太陽に覆い被さっていたはれぼったい雲は、風によってさらさらと遠方へ流れる。


いつしか見上げた先には広く透明な青空だけが広がっていた。


リリーは歩き疲れて、木陰の下で座りこむ。


はぁ―…


全然人に会わないし、一人もみつからないよぉ…。


リリーは眩しさに目を細めながら、空を見上げた。


…それにしても良い天気だなぁ。


ハンター試験だってこと、つい忘れちゃう。


風が気持ちい。


リリーは大きくあくびをする。


ハンター試験が始まってから寝不足で疲れが溜まっているリリーは、その場でうとうとし始める。


そして、軽く寝息を立てて眠ってしまった。


その様子を草むらから見ていた一人の人物がリリーに近づく。


気持ち良さそうにスヤスヤと熟睡しているリリーの前で立ち止まると、その人物は突然大声を出した。


「起きろ!!」


『え…!な、なに…っ!?』


リリーはその声に体をビクッとさせて、大きく目を見開く。


上を見上げるとそこには、怖い顔でじっとリリーを睨んでいるクラピカの姿だった。


『…クラピカ!なんでここに??』


驚きと嬉しさで目を輝かせるリリーに、クラピカは語調を荒くした。


「お前は馬鹿か!!こんな場所で居眠りなど、何を考えている!!居眠りの最中、プレートを奪われたらどうするつもりだったんだ!!」


リリーは首を竦めて、上目遣いで見上げながらしょんぼりと呟いた。


『…ご、ごめんなさい。どうしても眠たくて、そしたらいつの間にか寝ちゃってて…』


クラピカは更に冷たく激しい口調を続ける。


「お前のそうゆう所が危険を招くんだ!!試験に受かる気が本当にあるのか!?命知らずもいい加減にしろ!!」


『…………』


初めてだった。


クラピカにこんな怖い顔で怒鳴られたのは…


リリーの目に涙が溜まり始める。


ぐっと唇をかんで、瞬きをせずにリリーは泣くのを必死に堪えた。


クラピカが言い過ぎてしまったと後悔するにはもう遅く、とてつもなく悲しい表情をしているリリーに言葉を失った。


怒鳴ってしまって、すまない…。


そう言おうと口を開いた、そのときだった。


何者かの気配を感じたクラピカは、はっと周りを見渡した。


すると、右の草むらの中からリリーに向かって狙いを定めている人物がいる。


「伏せろ!!」


針のようなものがリリーに向かって襲いかかる。


クラピカは咄嗟にリリーをかばうと、突然首に痛みが走り、視界が段々と霞み始めた。


体が動かない。


鼓動の音だけが耳の奥で激しく木霊する。


訳がわからないリリーは、自分に覆い被さったクラピカが動かないことに心臓が跳ね上がる。


そして、クラピカはリリーの横に崩れ落ちた。


リリーはクラピカの名前を何度も叫んだ。


『…クラピカ…ッ!??ねぇっクラピカァ!!』


しかし、いくら名前を呼んでも、揺すってもクラピカは起きない。


草むらの中にいた人物は、舌打ちをするとその場から姿を消した―――…















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