voice
□男として
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「好きだ」
「…え…?」
え…?いま、なんて…。
思いもよらない言動に思わず目を丸くし、目の前の彼を見る。
「…あの…。いま、なんて仰いましたか…?」
「……だから…。由紀が好きだ」
う、そ。
あの達央先輩が少し照れながら言う。それが、本当だと実感し息が一瞬止まるのを感じた。
鈴木達央先輩とは、私のデビュー作で一緒になり事務所も同じということもあり、7才も年が離れていて私はお兄ちゃんみたいに接していた。
ーー好き、なんて考えてなかった
。
「う…、え、あ、あの…私…」
な、なんて言えばいいんだろ…。
目線を下にさげてもわかる達央先輩の視線。達央先輩のそれと、頭のなかがパニックで思わず顔に熱が篭る。
達央先輩のことは、好きだけど…。そうゆう好きでは、なくて…。
意を決して口を開く。
「わ、私は、達央先輩のこと、尊敬してます…」
「……」
「だ、だけど、私はー、っ!」
「……俺は、肯定しか聞かねぇよ」
甘く、切ない声で耳元で囁いた。
それと同時に腕をひかれ、達央先輩のうでの中にすっぽりとおさまってしまった。
「…っ、あ、あの」
ち、近い…!近すぎるよ…。
今までの距離と全然違くて、顔が赤くなるのを感じる。
そんな私を、達央先輩はふっと笑みを浮かべて、言った。
「…男として、みろよ」
「…っ!…」
そんな…。ズルイです。
(今までの”先輩後輩”の距離とは違う)
『男として、意識させる』
(そんなこと、言われたら…)
”男として”意識してしまう。